一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅨ│間違いだらけのコーポレートガバナンス(25)

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バルセロナのコロンブス記念塔

庇護者のハートにグサッとささる、見事なプレゼン

両王に宛てられたコロンブスの航海日誌は、現代の投資ビジネスに例えるならば、いわばスポンサーレターである。スポンサーレターとは、ベンチャーキャピタルやバイアウトファンドなど、投資家の資金を募って投資事業を行う者が、金主(LP出資者など)に対して定期的に行う投資進捗の報告書だ。

コロンブスのこのスポンサーレターのこの冒頭文には、この航海の背景や目的、手段が余すことなく書かれている。起業家が株主に提出する株主報告書と性格は同じだ。しかし、この航海は、株式会社が生まれる前の出来事だ。株主報告というより、スポンサーレターと捉えるほうが正確だろう。

そのスポンサーレターには、この航海の目的が明確に書かれている。それは未知の世界で偶像崇拝に耽り、闇に迷う哀れな異教徒に福音(イエスの言葉)を届けること。そして、「ナザレのイエスがキリスト(救世主)である」という信仰を広めることで、異教徒を救済しなくてはならないとする使命である。

コロンブス自身が、どこまで敬虔なキリスト教徒であったかは不明だ。しかし、彼はこのようなプレゼンがレコンキスタ完遂直後の両王、とりわけイザベル女王の宗教的高揚感に「グサッと刺さる」ことを知り尽くしていた。

西澤 龍 (にしざわ・りゅう)

IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー

投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員

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2020-08-09

スペインに渡ったユダヤ教徒たちは、どのようにして経済的に自立し、定住したのか。そして、どのような経緯で、金融の発展に関わっていくことになるのか。今回から本題となるユダヤ教徒と企業金融(コーポレートファイナンス)の歴史について触れていきたい。