ある年の宮廷の理論的税収が、満額で1兆円だったとしよう。当時の税の捕捉率はどのくらいだっただろうか。国家の徴税能力が高度に整備された今日でも、トーゴーサン(給与所得者約10割、自営業者約5割、農林水産業者約3割程度の捕捉率との推定)などといわれる。中世欧州の税の補足率は、恐らくこれよりさらに低いだろう。
仮に捕捉率が2割だったとしたら、満額税収1兆円に対して2000億円しか徴税できないことになる。住民基本台帳などもない時代に、そもそも理論的税収を推定することすら難しかったかも知れない...
今回のコラムは、「経営者の監視ができる仕組み」に関する現行のコーポレートガバナンス制度の有効性を前提としつつ、経営者の不正がなくならない原因について考えを述べてみたい。