『日本型PMIの方法論』|編集部おすすめの1冊
売り手企業と買い手企業がともに成長することを目的にまとめられたのが本書。M&A前後の経営者や事業会社でM&Aにかかわる担当者向けに、実践的なノウハウとして活用できるように仕上げてある。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事
藤田 耕司 (著) ・日本能率協会マネジメントセンター刊
かつて機械に仕事を奪われるといえば、単純労働というのが相場だった。だからロボットが生産現場に導入され始めた時代には、「機械にできない頭を使う仕事を身に着けるべきだ」と喧伝されたものだ。その代表格が公認会計士や税理士をはじめとする「士業」といわれる資格職だ。

ところが人工知能(AI)が登場し、人間並みの作業が可能なロボットが登場すると、事情は一変する。
それはそうだ。多額の開発費に加えて、数年で決して安くはないシステム更新費用が必要なAIや作業ロボットに、付加価値の低い単純労働をやらせるのはコストパフォーマンスが悪い。
結局のところ、飲食店の店員や清掃といった単純労働は人間にやらせておいた方が安上がり。むしろ給与水準が高い頭脳労働を機械に置き換えた方が、企業にとってコストダウン効果が大きい。だから都市銀行ではAIやインターネットサービスを積極的に導入する一方で、大規模な人員リストラに乗り出しているのである。
本書はこうしたAIの「黒船来航」に、士業はどう立ち向かえばいいのかを指南する。単純な財務や税務についてのアドバイスや決算書の作成であれば、今やパソコン一つで簡単に処理できるサービスが山ほどある。企業の経理の面倒を見ていればメシが食えた時代は、まもなく終わるだろう。現実にこうした業務の単価は下落する一方で、士業従事者にとっては厳しい状況に入っている。
では、どう生き残るべきか。その答えがタイトルにある通り「経営参謀」になることだ。著者は公認会計士や税理士は従来の経理サポートや監督省庁への許認可取得といった「作業者」の仕事から、経営コンサルタントとして企業経営に直接関与する「経営参謀」への転換を推奨する。
そのきっかけとなるのが、事業承継だ。中小企業庁によると、経営者の平均引退年齢は70歳。その齢を超える中小企業経営者は2028年には約245万人に達する見込みで、うち半数の127万人は後継者不在となる可能性が高いという。事業承継には士業の助力は欠かせず、「経営参謀」として企業との関係づくりができる。ニーズは山ほどあるのだ。
とはいえ、事業承継といっても「出口」はさまざま。株式譲渡や事業売却、合併、親族内承継、社内承継、外部からの経営者招聘(しょうへい)など選択肢は多い。そもそも業績が悪い企業には買い手もつかず、親族、社内、外部を問わず経営を引き継ぎたいとも思わないだろう。
顧客企業の業績を向上させ、社内を活性化させるための助言と指導ができなければ、単なる企業買収の仲買人で終わる。「経営参謀」として認められて成果を出すには、経営者が常に抱えている経営課題を洗い出し、悩みを聞きながら数字や理論だけでなく、経営者や社員の感情に寄り添う人間的なスキルが必要と説く。それこそがAIなど機械にできない仕事なのである。そのためのノウハウがぎっしり詰まった一冊だ。
文:M&A Online編集部
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