数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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あっても困らないものいえば、真っ先に思い浮かぶお金。誰だって懐具合は温かい方がいいに決まっている。もちろん、ため込むだけではなく、生きたお金の使い方をしたい……。そんなお金との付き合い方について、「生涯投資家」と「生涯漫画家」を自任するその道の練達が軽妙なテンポで大まじめに、時にきわどく、語り尽くす。
村上世彰さんは2000年代前半、村上ファンドを率いて日本中に旋風を巻き起こした。通産省(現経産省)の元官僚。今もモノ言う株主として「日本企業のあるべき姿」を求めて戦っている。かたや、サイバラこと、西原理恵子さんは「ぼくんち」「毎日かあさん」などの代表作で親しまれる個性派の人気漫画家。
2人に共通するのは大の“お金好き”という点。もっとも、村上さんを「投資エリート」とするならば、西原さんは「投資シロート(素人)」。
村上さんは小学3年生の時から株式投資を始め、お金の特訓を受けてきた。持論は「稼いで貯めて回して増やす」。一方の西原さんは本業の漫画で財をなすものの、実は投資(ギャンブルを含めて)に関しては負け続けてきたという。麻雀で何千万円も持っていかれ、FX(外国為替証拠金取引)でも大損を経験しているというのだ。
本書の前半では投資とギャンブルの違い、ギャンブルが儲からない理由、「期待値」をもとにした銘柄選びのコツ、リスク分散の心構え、損切りのタイミング、仮想通貨の将来性などについて、村上さんが西原さんに手ほどきする。
後半がいわば、実践編。村上さんのすすめで、西原さんが21歳の息子と親子2人で株式投資に挑戦する。まず、証券会社に口座を開設。手始めに、西原さんは日経225、息子はゲームソフトとラーメン店の株を購入した。
ところが、買ったとたんに株価が下落し、波乱含みで株式投資がスタートする。村上さんは「8勝2敗なら御の字。場合によっては5勝5敗でもいい」とあくまで冷静。トータルとしてどれだけ勝ったかが投資にとって重要だというのだ。
村上さんが「株をやり始めると、世界経済の話がちょっとずつ気になってくるでしょう」と言えば、西原さんの答えも「確かにそうなっている」。実際、息子にも変化が出て、トランプ大統領のニュースとか、CNNを見るようになったという。
「老後2000万円不足」問題が騒々しい昨今だが、本書にはお金と仲良くするヒントが随所に盛り込まれている。老後にまだ縁遠い若い人にぜひ手に取ってほしい一冊。西原さんならではのイラストも大いに楽しめる。(2019年6月発売)
文:M&A Online編集部
相続や事業承継で悩んでいる資産家や中小企業経営者らに的確なアドバイスを行い、ビジネスを拡大することを目的に、銀行員や税理士、コンサルタントら向けに書かれた営業トーク集。