数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』
三戸 政和 (著)/講談社+α新書
個人M&Aに関心が高まっている。テレビや雑誌でも特集されることが多くなった。その火付け役ともなった前作『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の続編。もちろん、通常の会計本とは趣を異にする。「会社を買う」ために最低限必要な会計知識をレクチャーする。
前作は15万部を超える大ヒットになったが、読者からは「300万円で買える会社があるはずがない」、「会社の選び方がわかならい」という声が多く寄せられたという。こうした疑問もM&Aに必要な会計知識を身につければ、おのずと解消するはずだと説く。
著者がサラリーマンに薦めるのは起業ではなく、あくまでもM&A。一定の顧客基盤や売上規模を持ちながら、経営のやり方が旧態依然で業績が長年振るわなかったり、後継者難で事業承継が困難だったりする小規模企業の買収だ。
では、そんな小さな企業の値段はどうやって決まるのか? 目安とされるのが「純資産+営業利益3年から5年分」。純資産とは資産から負債を差し引いたもの。営業利益とは売上高から営業に必要な費用を差し引いたもので、本業の実力(儲け)を示す重要な項目だ。
企業買収のときによく出てくる言葉が「のれん」。「純資産+営業利益3年から5年分」という場合の「3年から6年分」にあたる。
買収価格を検討する際には、ほかにEBITDA(イービッダ)という指標もある。支払利息や税金、減価償却費を差し引く前の利益のことだが、「EBITDAの4年(4倍)~6年(6倍)」が相場とされる。
本書の前半ではまず、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を読み解くための会計のイロハを学ぶ。簿記3級程度の理解を念頭に置き、BSやPLを見て、経営数値の大きな流れをつかむための要点を押さえている。
後半は「危ない会社」の見抜き方、「儲かる会社」をどうやって見つけるか、賢い会社の買い方について、企業評価の事例をまじえながら解説する。著者は評論家ではない。自身、投資ファンドを運営し、中小企業の事業再生や事業承継の最前線に立つだけに、実践的な内容だ。
定年後を見据えて今のうちからシフトチェンジに思いをめぐらせるサラリーマン諸氏にとって、「個人M&A」のハードルの高低を知るうえで役に立つ一冊。(2019年2月発売)
文:M&A Online編集部
前作の紹介記事はこちら
▶「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」
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