数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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『平成史』 保阪 正康著  (平凡社新書) 

「令和」への時代の代替わりを迎え、「平成」は後世、どのように語られることになるのだろうか。昭和史研究の第一人者として知られる著者が昭和との因果関係を踏まえながら、過ぎ行く「平成」を絵解きする。

著者は「平成は実質的に1995(平成7)年を起点にして始まった」と見立てる。この年、阪神・淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、戦後50年の「村山談話」(自民党・新党さきがけ・社会党による連立政権)が発表された。平成はすでにスタートしていたものの、これら三つの出来事が昭和の清算であり、平成の実質的なスタートであると位置づける。

その一つ、阪神・淡路大震災。関東大震災(大正12年)以来の衝撃的な災害だが、昭和の時代にまったく体験することのなかった反動として、日本人に改めて自然の恐怖を与えた。東日本大震災はこれに追い打ちをかけた。災害によって起こる社会現象、人心の変化や推移を読み取ることが平成という時代の解明の手がかりになるという。

本書は政治、経済、社会の様々な事象を取り上げ、昭和と対比しながら、平成という時代の深層に迫っている。その際のキーワードはほかならぬ「天皇」だ。

今回の天皇の生前退位は日本社会に改めて、国民統合の象徴として「天皇とはいかなる存在か」を問うことになった。著者があとがきで述べているように、天皇を見ることにより、「現在」が分かるというのは重要な意味を持つ。

「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」。天皇陛下が昨年12月、85歳の誕生日前の記者会見で、平和が続いていることへの率直な心情を表したことは記憶に新しい。平成の天皇と皇后は先の大戦の戦地に追悼と慰霊の旅を精力的に続けてきたが、このことは取りも直さず戦争への「抑止力」としての役を果たしてきたといって差し支えあるまい。

他方、平成における政治の劣化を手厳しく指摘する。小選挙区制導入(1994年に関連法案成立)を境に昭和と平成の政治はまったく様相を異にすることになったと分析する。安倍晋三内閣が長期政権となっている点には、この首相のレベルと国民の政治的関心がこの程度に過ぎないためだ、と述べている。

昭和も平成も元号であって、西暦のように100年を単位とする歴史観とは自ずと異なる。著者は改元を時代の“句読点”に例える。代替わりにあたり、平成の何を清算し、平成から何を受け継ぐのか、そのヒントが得られる一冊といえる。(2019年3月発売)

文:M&A online編集部