ROEの限界については色々な人が解説記事を書いています。
・安全性:経営の安全性を考えていない
・短期的:短期的な視点になりがち
・操作可能:自己株式取得や配当によって操作が可能
といったことが多いと思います。
安全性については、確かに借入主体のギリギリの経営をすることでROEは上げられます。
また、短期的という部分については、目の前のROEを上げるために必要な投資を怠れば、そのツケは数年後に回ってきます。もっともこの問題は、数年のROEを平均するなどすれば回避できます。
操作可能という点は、メリットでもありデメリットでもあります。
ROEは、会社が努力して利益を上げ、余剰な資金は市場に返すことで上げることができます。
意図的に操作できるというと胡散臭さがありますが、逆にROEを指標にすることで会社の努力を促すことができます。(これはROEに限らず、当事者にとってコントロール可能な指標を使うことのメリットです)
ROEは投資家目線での指標と言われますが、より投資家目線な指標としては株価収益率(PER)があります。
更に言えば、配当狙いではなくキャピタルゲイン狙いの投資家にとっては、株価の変動率のほうが直接的に利益に連動する指標です。
※ 株価収益率(PER)=株式の時価総額 ÷ 純利益
それでもROEが重視されるのは、株価には様々な思惑が入りすぎて会社の状態を見るにはノイズが大きすぎることがあります。
それに対しROEの計算に株価は関係ありません。会計数値から計算できる比較的「硬度」の髙い指標です。
このように、ROEは投資家目線の指標でありながら管理指標としての使いやすさも持っているオールラウンドの経営指標です。
そのため、限界は知られつつもROEは広く長く使われています。
オーナー企業では、ROEに縛られない経営ができるので長期的な意思決定がしやすいと言われます。
しかしながら、ROE自体が短期的な指標なわけではありません。前述した通り、数年の平均を取れば長期的な指標になります。
オーナー企業で長期的な意思決定がしやすいのは、むしろ資本構成についての目線の違いに理由がある気がします。
例えば、創業者が株式の100%を持っているオーナー企業では、当初の出資額に比べてどれくらい利益を上げているかが気になります。出資後に蓄積した利益はあまり意識されません。
これが上場企業となると常に株主が移り変わるため、過去に蓄積した利益も含めて資本効率を見ることになります。
つまり、オーナー企業の場合は資本金と利益を比較するのに対し、上場企業では全株主資本と利益の比較が投資額に対するリターンとなります。
前述したシナリオでは、増益を続ける優良企業でありながらROEが低迷していました。
これは、直近に株式を取得した人にとっては由々しき問題ですが、ずっと前から株式を持っている人からすればさして問題視しないかもしれません。
では、それが全く問題ないかというと、そうとも言い切れません。
「せっかく増収増益できるいいビジネスモデルを持っているのだから、いまのうちにしっかりお金をためて安全経営をしてほしい」という株主もいるかもしれませんが、
「せっかく利益を上げているのだから、うまく運用してほしい。その予定が無いなら、別の会社に投資したいから配当してほしい」という株主もいるかもしれません
結局のところ、どの程度のROEを目標とするかは、経営スタイルそのものを考えなければなりません。
旧・大蔵省(現・財務省)出身の中島義雄社長解任、代表権のない取締役に退き、代わりに比佐泰取締役が社長に就任。2006年から14年12月期までの9年間を専門家が分析した。
ワタミは、創業者である渡邉美樹氏の思いを大切に外食・宅食・農業・環境事業に取り組んでいる。2006年から15年3月期までの連結財務諸表10年分などを分析する。