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ROEは最良の指標か?
今回は「ROE(Return On Equity)」について考えてみる。ROEは投資家の好む指標ではあるが、企業の状況を確認するツールであり、それが目的化してはいけないとビズサプリの公認会計士花房幸範氏は語る。
ビズサプリの三木です。
前回の花房氏の記事ではROEについて書かせていただきました。経営指標というのはなかなか奥深いもので、会社や投資家の行動を大きく変えてしまいます。今回も再びROEについて考えをめぐらせてみたいと思います。
ROEが以下のように推移している会社があったとします。
どのような会社を想像するでしょうか。
1年目 5.1%
2年目 5.0%
3年目 4.9%
4年目 ▲59.5%(赤字)
5年目 11.9%
6年目 10.9%
※ ROE(株主資本利益率)=利益/株主資本
1~3年目のROEは5%前後と低めです。
4年目に大きな損失を計上しますが、5、6年目のROEは高くなっています。
経営効率の悪かった会社が、大きなリストラを経て経営効率を高めた。
そんな姿を想像するかもしれません。
実はこの会社は、以下のような設定で計算をしたものです。
・毎期増益する優良企業。
・4年目に災害で大きな臨時損失を計上した。
・災害後は以前と同じく増益ペースに戻った。
増収増益であれば経営指標も良いと思いがちです。
しかしながら、ROEは利益を株主資本で割って求めるため、毎期上げる利益が株主資本に蓄積されることで悪化してしまいます。
皮肉にも、運悪く災害で大損失が出たことで株主資本が減り、ROEを上げることができました。
増益を続けても下がっていたROEが、災害という不幸で改善する。
利益を増やすべく経費節減や営業努力をする企業からすると、憂鬱になってしまうようなシナリオです。
財務的な観点からは、せっかく過去に蓄積した利益が資金としてたまっているならば、その資金を元手に再投資することで、更なる利益の増加を目指すべきです。
それができないならば、余剰資金は配当などで還元するべきです。
この理屈から言えば、上記の会社は決して「優良企業」とは言えません。
しかしながら、毎期着実に増益しているとなれば経営者としては「何か文句があるか!」と言いたくなる気持ちも理解できます。
今回は「ROE(Return On Equity)」について考えてみる。ROEは投資家の好む指標ではあるが、企業の状況を確認するツールであり、それが目的化してはいけないとビズサプリの公認会計士花房幸範氏は語る。