3.ROE至上主義からの脱却

ROEは財務レバレッジを高めることで、財務戦略のみで上昇させることが出来ます。もちろん金融機関が青天井で貸し出しに応じてくれるわけではないですからおのずと限界がありますが、これだけ低金利の時代なので、お金を借りてでも出来る限り自己株買いをすれば、ROEが上昇して、株価に好影響を与える可能性があります。

しかし、それは本質的な意味で企業が成長しているわけではありません。本当に大事なことは、収益性を高めて利益を稼ぐことです。そのためには、設備投資や研究開発費といった、将来への投資を惜しまず継続的に行って行かなければなりません。それは、一次的にはコスト増になりますから、市場から常に増収増益を求められる上場会社にとっては、業績を睨みつつ予算の範囲で行っている状況でしょう。しかも四半期開示がなされる現在、短期的な視点での経営に陥りがちです。

その点、非上場会社は短期的な業績の変動を気にすることなく、長期的な成長の観点から思い切った投資が行えるので、経営者としては優位と言えます。また非上場会社にはオーナー企業も多く、オーナー社長の号令のもと一致団結して物事に取り組みやすく、不況の時代には上場会社に比べて非上場会社の方が成長している会社も多いという話も聞きます。

上場会社は、投資家の目に晒され継続的な成長を求められますから、経営者に対するプレッシャーは相当なものです。無理に増収増益を達成しようとして、それを前提とした予算を必達目標とし、従業員もそれに応えようとして無理をする、あるいは都合の悪い情報は上に流さない、それが今回の東芝の不適切会計問題の大きな要因のように報じられています。

人間でも無理を続ければ健康を害するように、企業も無理を続けると歪が生じ、それがさらに続くと大きな問題となって露呈し、最悪の場合、企業そのものが破綻してしまいます。人生と一緒で、企業も常に順風満帆ということはあまりないでしょう。山あり谷ありで、長期的に見て平均的にそれが右肩上がりとなれば、結果として成長できていると言えます。

株式投資の王道は、長期保有だと言います。一時的な浮き沈みに一喜一憂しても投資家としても疲れますから、多少のでこぼこはあっても、長期的に成長する会社を見つけて投資できれば、長い目で見て大きなキャピタルゲインを手にすることが出来ます。それに長けた世界一の投資家が、ウォーレンバフェットなのでしょう。

ROEのような経営指標は、企業の状況を確認するツールであって、それが目的化してはいけないと思います。ROEは投資家の好む指標ではあるので、対投資家対策としてROEとうまく付き合っていく必要はありますが、それに縛られては元も子もないと思います。

しょせんROEは過去の実績から得られる数値であり、企業は様々な社会的責任を負っていますから、たとえ一時的に業績は落ち込むことがあっても、存続し続けることの方が重要です。そこに終わりはありませんので、抗うことのできない市場環境の変化やビジネスモデルの変更等、短期的には減収減益となるような状況でも、長期的な成長を目指して取り組んでいることを丁寧に株主・投資家に説明し、理解してもらう必要があるでしょう。

文:株式会社ビズサプリ 花房メルマガバックナンバー(vol.008 2015.07.15)より転載

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