予算とワクチンが規制を緩和させた

第2の理由は自粛に伴う協力金や休業補償などの支払い抑制だ。2020年6月に成立した2020年度第二次補正予算にコロナ対策が盛り込まれ、同年度の歳出は160兆円を超えた。政府は増大するコロナ予算に危機感を強めている。

同12月に閣議決定した2021年度の当初予算案ではコロナ対策が謳(うた)われているものの、その内容は「コロナ後」にフォーカスされている。例えば業績が悪化した中小企業を救済する「持続化給付金」の申請は2021年1月15日に終了。その後は業態転換した企業への補助金に切り替える。

企業の休業手当を政府が補助する「雇用調整助成金」の上限額を引き上げる特例措置も同3月以降に見直される。「家賃支援給付金」も打ち切られ、コロナ禍で苦しむ企業に対する救済型支援はフェードアウトする方向だ。企業としてもM&Aや事業売却などで業態変換する戦略を早急に検討すべきだろう。

前回並みの自粛要請を実施すれば、再び救済型支援の予算が増大することになる。政府内部には「コロナ救済型支援で、本来は市場から退場すべき企業が生き残ってしまう」との声もあがっている。「ゾンビ企業の増加につながりかねない」と政府が懸念する救済型支援を抑えるためにも、緊急事態宣言による自粛要請を最低限に絞り込みたいのだ。

第3の理由は今回の緊急事態宣言の最大の目的が「時間稼ぎ」であること。すでに海外では新型コロナウイルスワクチンの接種が始まっており、日本でも早ければ2月にも輸入と接種が始まる。さらには気候が暖かくなれば、感染拡大のペースが落ちるとの期待もあるという。

新型コロナワクチンの出荷開始も要請緩和の一因に(写真はイメージ)

新型コロナ感染の収束が見えてきた現在、前回より踏み込んだ制限を課す必要はないとの判断だ。さらには再び厳しい制限を課すと「コロナ疲れ」した国民から反発を買うおそれもある。事実、欧米では長期化する行動規制に反対するデモが頻発した。

同じ「緊急事態宣言」でも、前回と今回とでは全くの別物なのだ。ただ、新規感染者数は前回宣言当時の数十倍に達しており、ワクチンも計画通りに輸入して接種できる保証はない。現在のワクチンが効かない変異種が出ないとも限らず、一つでも「想定外」の事態が起これば極めて深刻な事態となるだろう。

それを危惧して厳しいロックダウン(都市封鎖)を再び決断した欧米と、「第一波」よりも緩やかな対策で乗り切ろうとする日本。どちらの判断が正しかったかは、今春にも明らかになるだろう。

文:M&A Online編集部