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バイデン政権「米国ファースト」のはずのEV優遇税制で板挟みに

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独ミュンヘンの国際モーターショー「IAA MOBILITY 2023」で展示された中国CATL製のリン酸鉄リチウム電池(Photo By Reuters)

GM・共和党対フォード・UAW・民主党の構図で国論を二分

GMはLFP電池の生産を計画しておらず、フォードが安価なLFP電池を搭載するEVを量産したら、価格で太刀打ちできなくなる可能性が高い。そこで車両本体と電池を米国内で生産しても、「懸念される外国企業」技術に依存するLFP電池搭載EVを税額控除対象にすべきではないと訴えているのだ。

これに呼応した共和党議員や一部民主党議員が「米国発の技術に税金を投じるべきだ」と主張して、複数の委員会がCATLからの技術供与についての調査を開始したり、公聴会を開いたりしている。守勢に立たされたフォードは自社や電池を生産する完全子会社を「懸念される外国企業」とするのは不当だと巻き返しにかかった。

フォードは「税額控除規則に適合しないのなら、EV生産計画を縮小する」と政府に通告し、9月25日から電池工場の建設を一時中断している。全米自動車労働組合(UAW)もフォードのEV計画縮小で雇用が減少する可能性があることに懸念を表明した。民主党議員からはEVの普及を急ぐためにも、フォードのLFP電池搭載EVに税額控除を認めるべきだとの「援護射撃」をしている。

GMの異議申し立てによって、EV税額控除制度が「経済安全保障」問題に飛び火したのは政権の想定外だったろう。言い換えれば、企業が自社の競争を有利にするために「経済安全保障」問題にこじつけたとも言える。「経済安全保障」問題となると、国論を二分しかねない。大統領選を控えたバイデン大統領にとっては、どちらの味方をしても選挙にマイナスとなる可能性があり、身動きがとれない状況だ。

国民からの支持を得るために外国企業を排除して米国企業だけでEVの普及を図ろうと導入したインフレ抑制法のEV税額控除制度だが、大統領選挙目前に思わぬ「落とし穴」になった。バイデン大統領にとっては、頭の痛い問題になりそうだ。

文:M&A Online

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