粉飾決算の堀正工業、「資金の行方」と「多すぎる取引金融機関」
6月9日に事業を停止した堀正工業(株)(TSR企業コード:291038832、東京都)。その粉飾決算の衝撃が広がっている。
会社側が「3行」と説明していた取引のある金融機関は約50行、「40億円」と説明していた融資額は300億円以上にのぼるとみられる。長年の粉飾決算で引き出された融資の総額はあまりにも大きい。
粉飾決算が明るみになると、「当局が取引のある金融機関に堀正工業との取引について精査を求めた」と複数の関係者が明かす。主要仕入先のNTN(株)(TSR企業コード: 570384370、大阪府)も、「ユーザへ商品供給が滞ることがないよう対応する」とのコメントを公表し、対応に追われている。
粉飾で調達した資金の「行き先」はどこなのか。日増しに関心が高まっている。
東京商工リサーチの企業データベースによると、堀正工業の代表者が経営に携わる企業は約10社にのぼる。保育所やデイサービス、飲食店、ベアリング販売など、業態は多岐にわたる。堀正工業に融資した金融機関の担当者は、「(堀正工業の)関係会社に資金が流れた疑いは捨てきれない」と漏らす。だが、堀正工業のホームページには、国内の関連会社はホリマサシティファーム(株)(TSR企業コード: 017569648、東京都)が掲載されているだけだ。
非上場の専門商社に、約50行もの金融機関が取引した理由は何か。取材を進めると話の筋が交差するところも見えてきた。塗り固められた決算数値の中に、「固定資産の一部が異常に大きい箇所がある」と指摘する関係者もいる。
不意に発覚した粉飾の余波は日を追うごとに広がりを見せる。コロナ禍で経営破たんが目立たない時代が続いたが、堀正工業の粉飾の行方はいち中小企業の破たん劇にとどまりそうにない。