創業5年で企業価値1000億円超に

 にもかかわらず、ANAとピーチはIPOではなく、M&Aの道を選んだ。ANAはファースト・イースタンと産業革新機構が持つピーチ株(合計で28.33%)を304億円で2017年4月に取得する予定。取得価格からピーチの現在の企業価値を試算すると1073億円となる。2011年11月の増資時の企業価値は150億円で、わずか5年あまりに7倍に跳ね上がった計算となる。

 株式の一部を売却した2社がどのくらいのリターンを得られたのか。両社の持ち株比率の推移などから推定すると、ファースト・イースタンが140億円程度、産業革新機構が120億円程度の株式売却益を計上するとみられる。しかも、両社は売却後もピーチの株式をそれぞれ17.9%、15.1%を保有しており、これらの株式の時価を計算すると、192億円、162億円となる。

 このように今回のM&Aディールは投資家に大きな利益をもたらした。いくらANAが関与していたとはいえ、LCCは成功するかどうかは未知数のリスクの高い事業であった。こうしたハイリスクの案件に事業会社だけでなく、海外投資家と国内ファンドが協調投資をするというのも珍しいスキームだった。

 参入障壁が非常に高い航空産業において、当初から100億円単位の資金を投入して国産のLCCベンチャーを育成する取り組みは一定の成功を収めたと言えるだろう。日本のベンチャー投資は、数多くの企業に少額の資金を分散投資していくスタイルが主流で、1社あたりの出資額は数千万円から数億円にとどまるケースが多い。ピーチの成功によって、社会的にインパクトが大きい分野に集中投資するようなベンチャー投資が広がることを期待したい。

文:M&A Online編集部