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年金とM&A(2)円滑な制度引き継ぎ 買収後の企業価値を左右

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海外企業買収でも問題になる確定給付年金制度

――海外の年金制度はどのようになっているのですか

 「海外にも、確定拠出年金と確定給付年金が存在する。このうち、M&Aに際しては、特に確定給付年金に気をつけなくてはいけないのは同じだ。米国、カナダ、ドイツ、英国、オランダなどでは確定給付年金が普及しているので、大きな債務を持っている可能性がある」

 「また、年金制度の分割承継等では、満たさなければならないその国々の法規制が存在する。現地の法規制をしっかりと理解した上で、M&A前後での年金制度の取り扱いを決めなければならない」



クロスボーダーM&Aでは医療保険等の準備も重要

――クロスボーダーのM&Aに際して年金以外で気をつけなくてはいけないことは

 「年金だけでなく、医療保険などのベネフィットも留意する必要がある。海外では会社が民間の医療保険を提供していることが多い。新会社設立までにしっかりと準備しておかないと、買収後に医療保険が途切れることになってしまう。民間保険にしかカバーされていない従業員からすれば、これは大きな問題だ。買収後に途切れることが無いように、新会社設立までに準備しないといけない。会社がすべてを自前で用意するのは大変で、マーシュのようなグローバルネットワークをもった保険仲介会社を活用するのもよいだろう」

 「また、今の話は、クロスボーダーM&Aだけに限った話ではなく、実は日本企業同士の合併等でも起こりうる。というのは、ほとんどの日本企業は何らかの形で海外でのオペレーションを持っているからだ。日本企業同士の合併がおこった途端に、各国ごとに、人事制度、年金制度、保険等を整理し、統合していかなくてはならない。日本企業がグローバル化していく中で、日本の本社主導で、各国の年金制度や保険を管理していく必要が、今後、ますます増大していくであろう」

取材・文 M&A Online編集部

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関根 賢二 (せきね・けんじ)

マーシュ アンド マクレナン カンパニーズ 戦略推進グループ ディレクター

株式会社日本興業銀行、タワーズペリン(現ウィリスタワーズワトソン)、マーサージャパンM&A部門、年金コンサルティング部門を経て現職。年金関連業務における15年以上の経験を持ち、数理計算、制度設計、年金ALM、M&Aにおけるデューデリジェンスや契約交渉など幅広いプロジェクト経験を有する。マーサージャパン入社後は、クロスボーダーM&Aを中心に数々のグローバル・プロジェクトを統括。年金コンサルタントしての米国実務経験も有し、日本のみならず海外年金事情にも詳しい。

著書に「事業再編とバイアウト(中央経済社、共著)」「年金学入門(きんざい、共訳)」がある。

慶応大学、慶応大学院卒(理学修士)、ペンシルバニア大学ウォートン・スクール経営学修士(MBA)修了。日本アクチュアリー会正会員・年金数理人・日本証券アナリスト協会検定会員・米国CFA協会認定証券アナリスト


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