「実に面白い」9年ぶりの映画版ガリレオ|『沈黙のパレード』

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©2022「沈黙のパレード」製作委員会

15年目の最新作が遂に公開!

『沈黙のパレード』が9月16日より全国公開となりました。東野圭吾原作・福山雅治主演のガリレオシリーズ最新作として映画では9年ぶりとなります。共演に内海薫役の柴咲コウが復活したほか、今まで以上に北村一輝演じる草薙俊平のウェイトが重い作品となっています。

メインの3人と豪華なゲスト陣をさばくのはドラマシリーズからガリレオを手掛け続けてきた西谷弘監督。福山雅治は映画出演が多い方ではないのですが、西谷監督とは今回でなんと6作目の共作となります。

©2022「沈黙のパレード」製作委員会

映像化までの軌跡

1998年に短編集「探偵ガリレオ」でスタートした東野圭吾のガリレオシリーズ。最新長編「透明な螺旋」まで20年以上続く人気シリーズとなりました。「卒業」「新参者」の加賀恭一郎シリーズと並んで東野圭吾のドル箱タイトルとなっています。

2005年にはシリーズ初の長編作品となった「容疑者Xの献身」がその年の直木賞を受賞。さらにミステリー小説の各種年間ベストテンで1位を独占したことで、映像化の話が動き出します。2007年秋にフジテレビ月9枠でのドラマ化が決定、主演は福山雅治、共演には柴咲コウ、北村一輝の名前が並びました。

もはやトリビアでもないかもしれませんが、柴咲コウ演じる内海薫という若手刑事はドラマオリジナルのキャラクターでした。ガリレオこと湯川学(=福山雅治)と内海との相性の良さを気に入った原作者の東野圭吾が、のちにドラマから逆輸入のような形で原作小説シリーズにも内海を登場させることになりました。

福山雅治は主演だけでなく、主題歌を柴咲コウとのスペシャルユニット「KOH+」として楽曲を提供したほか、共作という形でサウンドトラックにも参加、メインテーマの「vs.~知覚と快楽の螺旋~ 」も手掛けています。

ドラマの1stシーズンは犯人や事件関係者役に毎回豪華なゲストが出演したことも話題を呼び、高視聴率のまま終了。そして初の映画化作品『容疑者Xの献身』の公開が2008年にアナウンスされます。

意外にも福山雅治はこの『容疑者Xの献身』が映画初主演となりました。堤真一や松雪泰子がゲストとして登場する豪華な布陣もあって、興行収入は49億円を超えるヒット作となりました。

ここから福山雅治と湯川学の長い旅路が始まります。

福山雅治は大河ドラマ「龍馬伝」を撮り終えた2013年にドラマの2ndシリーズ、さらには同年公開の劇場版第二弾『真夏の方程式』で立て続けに湯川学を演じます。

福山雅治は是枝裕和、ジョン・ウー、岩井俊二、大友啓史といった名だたる映画監督とのコラボを経て、9年ぶりに『沈黙のパレード』とその前日談的SPドラマ「ガリレオ禁断の魔術」でカムバックを果たしました。気が付けば、足掛け15年に渡って福山雅治は同じ役を演じ続けています。

“映画ガリレオ”は人間ドラマなのか

大阪府立大学工学部卒で、日本電装(現デンソー)の元技術者という理系出身の東野作品を「ミステリー」ではなく「人間ドラマ」と評することに意外な思いもされるかもしれませんが、実際のところ東野作品の多くは人間ドラマを軸にしたものが多いです。

もちろん中には「プラチナデータ」や「ラプラスの魔女」、「パラレルワールド・ラブストーリー」などSF(サイエンス・フィクション)に梶を切った作品もありますが、多くの作品は人間ドラマです。

歴史と伝統の街・日本橋を舞台に各話ごとにその土地に住む人々の秘密を追う「新参者」などは、その極端な例と言えるでしょう。これまでの“映画のガリレオ”もまた、同じことが言えます。推理小説として『容疑者Xの献身』はクラシカルな部類に入り、そのトリック解明は物語の主眼ではありませんでした。

『容疑者Xの献身』のメインテーマは、孤独な中年数学者の無償の愛とかつての親友・湯川との友情物語です。映画2作目の『真夏の方程式』はトリックこそやや理系なものでしたが、物語のメインは殺人が起きた理由である遥か過去の出来事と、偶然知り合った少年と湯川とのひと夏の物語でした。そして『沈黙のパレード』もまた同様です。

『容疑者Xの献身』と対になる、15年積み重ねられた物語

『沈黙のパレード』に登場する人々も小さな町でコツコツと暮している人たちばかり。そこにある事件が起き、最重要人物が容疑濃厚であるにも関わらず、釈放されてしまったことから物語が動き始めます。

この男は過去にも大きな犯罪の重要参考人になった経歴を持ちつつ、無罪となった人物。あきらかに黒に近い人間であるにも関わらず、罪に問われないことで、小さな町に住む普通の人々の心に大きな波を立てることになります。そして偶然、この町に縁ができた湯川は事件に関わっていきます。

さらにこの男と草薙との間にも深い因縁があったことから、湯川は正義と友情の間で大きく揺れることになります。

©2022「沈黙のパレード」製作委員会

劇中でも湯川のセリフとして言及されていますが、かつて湯川は「犯罪の真相を暴く」という正義と古くからの友情の間で大きく悩み、一つの悲しい結末を迎えたことがあります。この顛末を描いたのが『容疑者Xの献身』でした。

「実に面白い」

『沈黙のパレード』は単体でも楽しめる一方で、映画1作目『容疑者Xの献身』と対になる部分もあり、15年の時を積み重ねたシリーズの重さも感じることができる一本に仕上がっていると言っていいでしょう。「実に面白い」作品であることは間違いありません。

文:村松健太郎(映画文筆屋)

<作品データ>
「沈黙のパレード」
2022年9月16日(金)公開 / 上映時間:130分 / 製作:2022年(日本) / 配給:東宝
『沈黙のパレード』公式サイト

沈黙のパレード
©2022「沈黙のパレード」製作委員会

村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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