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「M&Aの優先交渉権とは何か」しっかり学ぶM&A基礎講座(9)

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最高裁の判断は?

最高裁の判断では、社会通念上、最終的な合意の可能性がないと判断された場合には独占交渉権が失効するものの、UFJグループと住友信託との間では最終的な合意が成立する可能性がないとは言えないため、独占交渉権は失効していないとされた。

しかし、差し止めの仮処分に関しては、合意成立の可能性が相当に低い点、仮処分を認めた場合にUFJグループに多大な損害が生じる点、住友信託に生じる損害は事後的に賠償が可能である点などが考慮され、認められるには至らなかった。

 東京地裁、東京高裁、最高裁のそれぞれで仮処分についての結論やその根拠は異なっていたが、基本合意の中にある独占交渉権には法的拘束力があり、差止請求権の根拠となるという点については共通した考えのようだ。

実務上、基本合意の中に優先交渉あるいは独占交渉の義務に違反した場合の違約金を定めている場合もあれば、そうした違約金を定めていない場合もある。また、売り手だけに過重な義務を課して公平性を欠く合意内容となっている場合もある。M&Aの過程において優先交渉権が争点となることも十分想定されるため、基本合意書の条項をあらためてチェックしてみることも有用ではないだろうか。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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