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社員の「健康状態」で変わるM&Aの行方 パブリックヘルス協議会 木村もりよ代表理事インタビュー

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パブリックヘルス協議会の木村もりよ代表理事

健康診断データの解析で部署による健康格差が見えてくる

ーデータ解析結果からどのようなことが分かるのですか。

「解析によってその会社にどんな病気があるのか。医療費がどれぐらい使われているのか。さらに大企業であれば支店とか支社、あるいはいろいろな部署による健康格差などが分かる。部署によって喫煙率が高いとか飲酒率が高いとか、あるいはどの部署にメンタルな問題を抱えている人が多いのかといったことが見えてくる。そういうのが特性として分かってくるのは非常に大きなことである。なぜなら企業がある部署の健康状態が悪いのは何が問題なのかーということを掘り下げて考えることができるからだ。もちろん集団を比較評価するには単純平均では難しい。例えば二つの支店間で医療費を比較するのに年齢構成が違う場合を考えると分かりやすい」

「そうして何らかの介入をすることができれば、その部署の健康状態は変わってくる可能性がある。また、部署ごとに業績の差がある場合、業績の差も健康問題にかかわってくるかもしれない。特にメンタル疾患で休みがちである人が多い部署の業績は散々であろう。では、なぜそこにメンタル疾患を抱える人が多いのか。人間関係は重要なファクターではあるが、それ以外にも組織として、何か少し変えることによってグループの健康度を上げることができるかもしれない。それは業績を上げることにもつながるだろう。データを持つということは、そうしたことを探求する責任があるということではないだろうか」

ーそのような考えで、健康診断のデータ解析している企業はあるのですか。

「まだないだろう。おそらくは企業内では、“わが社では糖尿病が非常に問題です。喫煙が非常に問題です。これを予防することによって、これぐらいの医療費が浮きます”、というようなことを行っているだけであろう。産業医活動を通じて分かることは、人の行動を変えるのはそう簡単ではないということ。あなたは太りすぎなので、痩せなさいと何度言っても、痩せない人がほとんど。予防で医療費が軽減できるというのは具体的に実施可能な実行プランがないのであれば、机上の空論。そうであれば、もう少し具体的に何らかの介入可能なことを見つけてあげる方が会社にとっては役に立つだろう」

ー健康診断データを解析するだけで、そんな効果がでるのでしょうか。

「もちろん健康診断のデータだけではできない。健康診断のデータは毎日測っている体重と同じようなもの。体重からすべてを推測することはできないように、健康診断のデータだけですべてが分かるわけではない。人の健康には様々なファクターがかかわってくる。例えば上司、同僚との関係もそうだし、介護、子育てなどの家庭環境もそう。通勤の距離などもある。人がどの程度の健康度を持っているのかを知るためには、健康診断以外の様々なデータを集めないと、より信頼性の高い評価はできない。会社は個人の体重管理にダイレクトに介入することは難しいが、健康度と関連性が高く改善もできるファクターを見つけることができれば、その点をコントロールすることで健康状態を良くすることができるかもしれない。今は健康診断のデータの解析を主に行っているが、将来は様々なデータを集めて、総合的に判断できるようにしたい」

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