モノづくり企業も買う「ジャパネット」髙田旭人社長に聞いた

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髙田旭人ジャパネットホールディングス社長

通信販売事業で大きく成長したジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)がCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に力を注いでいる。同社は2021年に50億円強のファンドを組成し、すでに8社のスタートアップに出資した。

合わせてM&Aにも前向きで、今後イベント関連や飲食、制作会社、モノづくり分野と幅広く対象企業を検討していく方針だ。通販会社がなぜ、CVCやM&Aに取り組むのか。同社の髙田旭人社長にお聞きした。

世の中ためになる企業にも投資

-2023年に超小型陽子線がん治療装置などを開発中のビードットメディカル(東京都江戸川区)に出資されました。どのような効果を狙われているのでしょうか。

投資の基準は三つある。一つ目は「社会的価値のある取り組みを行う会社」、二つ目は「ジャパネットグループの業務とのシナジーを見込む会社」、そして「純投資」だ。

陽子線がん治療装置がなかなか広まらない中で、超小型のものができれば、多くの人が救われることになる。こうした世の中ためになる企業には投資をするという考え方だ。もちろん、理念だけでなく、経営の体制もしっかりしていたので投資に踏み切った。

他にも、コロナの時には、地域の飲食店と社員とを結び新たな社食スタイルを提供する「びずめし」事業を手がけているGigi様に出資をした。困っている飲食店を支援できるならとの思いで出資を決めた。

-Web3(ブロックチェーン技術を用いた分散型インターネットで、自身の情報を自身で保有、管理できる仕組みを指す)を使って新しい事業の開拓に取り組んでいるUPBOND(東京都渋谷区)にも出資されています。

UPBOND様は一般的な純投資に近いだろう。また空飛ぶ自動車を手がけているSkyDrive(愛知県豊田市)様にも出資しているが、こちらは空飛ぶ自動車が成功した時にはジャパネットで販売することができるとも思っている。こうした本業とのシナジーがあるところにも出資する。

-2021年CVCを始められました。そもそもどのような狙いがあったのでしょうか。

お金は置いていても何も価値を生まない。お金が価値を生み出すにはどうしたらいいのかと考えた時に、ただお金を渡して増やしてもらうだけでは意味がないと考えた。ジャパネットは自前主義で、自分たちの意思で成果を出したいと思っているからだ。そこで、お金が価値を生み出すには何かに投資すべきだとの結論に達し、自分たちの意思も交えながらやれるCVCにたどり着いた。

-M&Aにも積極的ですね。

従来は通販だけだったのが、最近はスポーツや地域創生、飲食、テレビ局など事業領域が急速に広がってきた。それぞれの強化のためには、外の経験やノウハウを持った人を組み入れるべきだろうということからM&Aを進めている。

M&Aで売り上げがこれくらい増えるだとか、利益がこれくらい増えるだとかいったことよりも、ジャパネットと対象会社との連携により、双方がどれだけ事業を発展させられるかが重要な投資基準になる。

-具体的にはどのような分野ですか。

現在、長崎でスタジアムを中心とした街づくりを進めており、そこではコンサートや飲食店の展開なども行う。このためイベントの知見を持つ会社様と一緒にやれたら面白いと考えている。他にも昨年BS放送局を開局し番組作りも行っているため制作系のスキルを持った人たちがいる会社様とも一緒にやりたい。

モノづくりの分野も考えている。いいモノがあるのだったら世の中に広げたいと考えている。日本の職人さんはいいモノを作っているのに控え目に売っている。ジャパネットとモノづくりとの相性はいいだろう。

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