政府の「資産所得倍増計画」、個人資産の倍増には何年かかるのか

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NISAの口座数と投資総額を倍増する政府の目論見は当たるか(写真はイメージ)

急成長よりも緩やかで着実な資産シフトを

一方で株価が下落すれば、運用利回りも下がって倍増までの期間は伸びるし、資産が目減りする可能性すらある。政府が世界最高水準の研究力を持つ大学の育成を目指して設立した大学ファンド(基金)が、債券や株式の値下がりで運用資産が目減り。運用開始からわずか半年の4~9月に1881億円の損失を抱えたのは記憶に新しい。

日本人はそうした下落リスクを嫌い、家計金融資産の54.9%を「安全資産」の現金・預金が占めているのが現状だ。米国の12.8%、英国の27.2%を大幅に上回っている。そこで政府は積み上がった家計の現預金を株式市場へ移そうとしているのだ。

株式市場は「買い」が入れば上昇する。「資産所得倍増計画」が広く国民に受け入れられれば、かつての「アベノミクス」と同様に株価を押し上げ、「資産所得」を増やすことができるだろう。問題は「安全資産」から「リスク資産」へ向かう資産シフトのスピードだ。米国や英国は長い時間をかけて株式などのリスク資産へシフトしてきた。

これを政府が提唱する5年という短期間で実行した場合、急激な株高とそれを目の当たりにした多くの国民が身の丈に合わない無理な投資をする可能性が高い。いわゆる「バブル」だ。株価が上がるだけ上がり、国民が株式市場に資金投入する余力をなくせば株式市場は暴落することになる。

そうなれば「バブル」に入ってから高値で株式市場に参入した国民は、個人資産の大半を失うことになりかねない。労働所得で損失をリカバリーできない高齢者にとっては死活問題だ。政府も、株式投資に参加する国民も、決して急いではならない。

国民の資産所得を確実に増やすために、政府は10年、20年をかけて緩やかにリスク資産への投資を促す必要がある。目先の相場が下落しても、長期間保有し続けることでリスクを減らすことが可能だからだ。

金融庁の調べではNISAの口座数は20〜30代が424万口座と最も多く、長期投資が可能な若い世代が注目していることが分かる。政府が「資産所得倍増計画」を成功させるためには、株価が暴落しても狼狽売りせず長期間にわたって投資活動を持続できるだけの時間的余裕がある若年層の取り込みがカギになるだろう。

文:M&A Online編集部

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