第3のリスクは治療体制の不備だ。大阪府は4月22日に1167人の新規感染者が確認され、重症患者向けの病床使用率が100%を超えたと発表した。病床不足で受入先がなく、自宅や介護施設などで死亡する「医療崩壊死」も相次いでいる。
大阪府は感染率の高い新型コロナ変異株が流行する兆候があったにもかかわらず、政府に第2次緊急事態宣言の解除を要請した。3月31日に宣言は解除されたが、早くも4月8日には第4波による重症患者の急増で府が「医療非常事態」を宣言。重症患者を受け入れていた大阪市立総合医療センターでは、第3波の収束を受けて重症病床数をピーク時の半分以下に減らしていたため、たちまちパンク状態になった。
吉村洋文大阪府知事は「すべてとは言わなくても、民間でコロナを受け入れている病院の比率は低い」と民間医療機関に責任転嫁した。これに対して大阪府保険医協会は「病床の稼働率が前提となる余裕のない診療報酬、公立・公的病院の統廃合、急性期病床削減を進める国の政策のツケは大きい。その政策の誤りを反省せず、民間病院攻撃に繋がる一方的な国や大阪府の方針は、国民と医療機関に責任を転換し、さらに国民に“分断”を持ち込みかねないもので強い憤りを感じる」と激しく非難する声明を発表した。
同協会の指摘は、そのまま治療を受けられずに死亡した遺族や後遺症が残った患者からの損害賠償訴訟につながりかねない「行政の失策」だろう。「医療費削減」を優先するあまり稼働率が低いと診療報酬を減額することで病床数を削減し、重症者ケアの急性期医療を支える公立・公的病院を整理してきた国や自治体の医療行政が「新型コロナの医療崩壊と大量の入院待機死を招いた」として訴えられかねない。
国と地方自治体は新型コロナ感染が収束した後に、企業や患者から損害賠償訴訟に直面することになるだろう。中小企業や個人による集団訴訟が多発する可能性もある。行政機関の「コロナ禍」は、感染が終息しても終わりそうにない。
文:M&A Online編集部