制度づくりで問われるミドルマネジメントの重要性

津田氏は「特にスタートアップにおいては、未来を見据えた制度づくりが重要」と指摘する。

SmartHRの薮田氏

薮田氏は、「将来に何が起こるかを想定し、1,2年後のために今どんな制度が必要か、大切かを考え施策を打つ“逆算の思考”が重要だ」とする。そして、確実に訪れるのは、ミドルマネジメント層の不足。一朝一夕には解決できない課題だ。プロジェクトマネジメントができる人材はすぐに育っても、ヒューマンマネジメントができる人材が育つには時間がかかる。このため、SmartHRではマネジメントにチャレンジできる機会を増やすような仕組みにしているという。

佐藤氏も同様で、「制度をつくってくれる人が欲しい」とする。評価制度となると連動したインセンティブも必要であり、そうした評価制度をどう構築するか。佐藤氏は「これから組織化していく際の人事上の最大の課題」と続ける。

ミドルマネジメント不足は増井氏も指摘する。ITスタートアップにはフルスタックエンジニア(1人で複数の分野に精通した人材)は存在しても、「フルスタックマネジャーが少ない」と指摘。いわば、組織づくりとPL(損益計算書)の両方をつくっていける人材といってよい。Holmesの社員は現在30人ほどだが、そうした人材は100人規模に成長していく過程では絶対に欠かせない。

動機づけには外発的なものと内発的なものがあり、小規模な会社では内発的な動機づけのウェートが大きいと一般的にいわれている。増井氏は、そもそも論として「人に報いるとはどういうことかといった議論から進めていくことも大事」とする。マネジメントの観点からは、「数字を追うことが好きな人とメンバーをフォローするのが好きな人のマネジメントスタイルは異なる。そのマネジャーの適材適所を考えるのも人事の役割」ととらえている。

では、スタートアップがいつ評価制度を構築し始めたよいか。

SmartHRの薮田氏は「とにかく早く始めることが大事」という。「評価制度設計は農業のようなもので、1年経たないと結果がわからない。導入アナウンスをし、評価をし、評価結果を元に評価者や被評価者の反応を見る。一連のサイクルに時間がかかるが、早めに設定・導入しておけば、どんどんブラッシュアップできる」とする。

経営層を客観的に見ることができる立場でもある人事。現場との板挟みにもなるが、経営層を育てるのも人事の役割。これは増井氏の発言だが、スタートアップの人事に携わる人は新しい人事のあり方を構築していく際に、ぜひ心に留めておきたい。

取材・文:M&A online編集部