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株式の非上場化

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写真はイメージです

3.不況に強いのは上場会社かオーナー会社か?

少し前になりますが、2014年7月11日付の日経新聞の記事で、『オーナー企業、資産の効率利用でサラリーマン経営上回る』という記事がありました。
その要旨を簡単に述べると、大株主に創業家や創業一族がいたり、経営に携わったりする企業を「オーナー系」、それ以外を「非オーナー系」に分け、業績や財務などを比較した結果、総資産利益率(ROA)は非オーナー系が平均7.83%に対してオーナー系の平均は9.03%と大きく、またその他の指標も総じてオーナー系の方が成績が良かったと言うのです。

非上場会社=オーナー会社ではないですが、非上場の会社は上場会社に比べて株式の売買が自由でない分、株式が誰かに集中しやすい傾向にあるのは事実です。そしてMBOは経営者が中心となって株式を買い取るため、MBOした会社も一種のオーナー会社と言えます。実際MBOの多くは、元々創業者が上場後、株式を買い戻すケースも目立ちます。

元々の創業者、あるいは当初はサラリーマン社長であってもMBOをする経営者は事業への思い入れが非常に強く、リスクを取って、すなわち覚悟を以って経営できるのが強みのように思います。そしてそのような経営者は総じて行動力や従業員を大事にする姿勢から、カリスマ経営者として、従業員のベクトルを一つの方向へ集中することで、大きな改革を成功に導けるのでしょう。

不況下においてはいち早く課題を把握し、対応策を計画し、実行するスピード感が重要となります。また現在企業が置かれている環境は、国内における市場規模の成長の限界・縮小や、世界的な社会情勢の不安感、AI、IoTに代表されるITの進化等の中、企業自身がドラスティックに変化・対応していかなければなりません。その意味で社長1人で意思決定できず、取締役会、場合によっては株主総会を経なければ行動できない上場会社と、社長の一存で物事を決め、全社員をいつにまとめられる求心力のあるオーナー会社の方が、一般的には優位であると言えそうです。

冒頭のUSENに限らず、昨年はマネースクエアHD、アデランス、今年はTASAKI等、有名企業のMBOが続いています。またかつてMBOした企業の再上場では、2014年のすかいらーく、今年3月のあきんどスシロー等があります。
一度MBOで非上場化した後で改革を行い、体制を立て直して再び成長軌道に乗せ、再上場を図るというのも企業の戦略の1つと言えます。

一方で上場会社の方は一般的にその知名度、社会的安心感から優秀な社員を集めやすく、借入だけでなく資本市場からの資金調達が出来るので多額の資金を集めやすい、会計監査を受ける過程において内部統制がきちんと整備・運用されることや一定のガバナンスが求められることから、経営管理体制が充実する、といった点で優位性があります。

起業した経営者の1つの目標は「上場」です。ある程度ビジネスが軌道に乗り、より成長を加速するため、上場することを目指しますが、上場そのものが目的ではなく、上場していることを通じて、会社の理念や経営方針の実現を目指して行くことが肝要です。最近は『ESG』投資という言葉もあり、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重要視して投資をする考え方です。

シリコンバレーでは、世の中の問題解決型の起業が多いとも聞きます。やはり起業の目的として重要なのは、いかに世の中の役に立つか、ということではないでしょうか。そのための戦略の1つとして、上場か非上場化の選択があると思います。

文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.061 2017.9.29)より転載

花房 幸範​

株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士
学歴:中央大学商学部会計学科卒業
職歴:1997年10月より、中央青山監査法人にて5年間、現場責任者として上場会社・外資系企業の会計監査の他、IPO支援・財務デューデリジェンス等に従事。2002年10月より5年間、日本アジアホールディングズ㈱(現日本アジアグループ㈱)の財務経理部長として資金調達、決算業務を主軸に、企業買収とその後の事業再生に携わる。2007年から2年間、中小のコンサルティング会社にて主に製造業、金融業、小売業等の連結決算支援、内部統制構築・整備支援、業務改善支援等に従事し、2009年10月より独立。アカウンティングワークス㈱の代表取締役として、現在に至る。決算開示支援、業務改善、M&A支援等の会計コンサルティングを幅広く行うとともに、セミナー・執筆等も実施。特にM&A、連結会計、ワークシートを活用した業務効率化の導入支援に強みを持つ
著書:有価証券報告書を使った決算書速読術、決算書分析術、ビジネスモデル分析術2等(いずれも阪急コミュニケーションズ)。


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