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日産・ホンダ提携の「EV全方位戦略」は、世界再編の始まりか?

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日産自動車<7201>が「電気自動車(EV)全方位」戦略を打ち出した。トヨタ自動車<7203>のハイブリッド車(HV)や水素燃料電池車(FCV)を含む「カーボンニュートラル全方位」に対抗してEVに絞り込み、ホンダ<7267>との提携に踏み込んだ。日産はEVで仏ルノーや米スタートアップのフィスカーへの投資を進めている。日米欧でそれぞれ「EV連合」を組み、EVシフトを乗り切る構えだ。

EVシフトをにらんだ日産・ホンダ連合

日産はホンダとの間で自動車の電動化・知能化に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結した。カーボンニュートラルの実現に向け、環境技術・電動化技術・ソフトウェア開発などを強化するため、両社の強みを活かした協業を検討する。具体的には車載ソフトウエアプラットフォームやEVのコアコンポーネント、商品の相互補完などの幅広い分野で検討を進めていく。

日産の内田誠社長は「モビリティーの変革に対応するため、中長期的な視点で備えることが重要であり、今回の合意は意義深い」、ホンダの三部敏宏社長は「自動車業界の変革期において、両社の技術や知見を活かし、業界のトップランナーとして新たな価値創造をリードできるか検討していく」と、それぞれコメントした。

HVやエンジン車を含む2023年の世界販売台数では日産が約337万台、ホンダが約419万台の合計約756万台に対して、トヨタは1030万台(ダイハツ工業・日野自動車を含むグループ全体では1123万台)と大きな格差がある。

一方、EVでは日産・ホンダ連合が15万7615台と、トヨタの10万4000台の1.5倍と優位に立つ。EVに消極的と言われているトヨタを尻目に、日産とホンダが連合を組むことでHVを含むエンジン車では太刀打ちできないトヨタとの競争を有利に運ぼうというわけだ。

メーカー 2023年のEV販売台数
日産自動車 138,500
ホンダ  19,115
日産・ホンダ連合 157,615
トヨタ自動車 104,000

EVでも急追のトヨタに、EV国内トップの日産にも焦り

日産は仏ルノーのEV子会社アンペアへの出資を決めているほか、米フィスカーに4億ドル(約600億円)規模の投資をして2026年からピックアップトラック型EVを米国生産するとの報道もある。ホンダとの提携で、日米欧のEV提携網が完成することになりそうだ。

ホンダは2023年10月に米ゼネラル・モーターズ(GM)との低価格中小型EVの共同開発を中止すると発表。ガソリン車と同レベルの競争力を持つ3万ドル(約450万円)程度のEVを目指していたが、商品性と価格のバランスを取ることが難しいとして断念したという。ホンダとしては新たなEV開発の提携相手を探さざるを得ない状況だった。

日産にとってもEVシフトの加速は急務になっている。現在のEV販売台数こそトヨタを上回っているが、前年比では日産が5.3%減、ホンダが14.1%減と前年割れだった。一方、トヨタは325.2%増と急増しており、日産が「国内EVナンバーワン」の座から転落する可能性も出てきた。

日産としては日米欧でEV協業を組み、少なくともEV販売だけではトヨタをリードするポジションを死守する必要に迫られている。ただ、提携先が3社に分散すると、EV戦略の整合性を取るのが難しくなるのは避けられない。内燃機関(エンジン)車の時代は日米欧で車づくりが異なっていたため、それぞれの地域で別々のパートナーと提携しても問題はなかった。

EVシフトで自動車の世界再編は避けられない

20年ほど前からは日本はHV、米国や中国市場はガソリン車、欧州市場はディーゼル車と地域別の棲(す)み分けができていた。だから、米国と欧州でそれぞれ違うパートナーと提携関係を結ぶのは当たり前だったし、むしろ不可避だったと言ってよい。

しかし、EVは「世界製品」化しており、世界中で同じモデルが売れる状況だ。かつての携帯電話は各国でバラバラが当たり前だったが、スマートフォンが主流になると米アップルが販売する「iPhone」のように世界中でワンモデルを販売するのが当たり前になった。EVでも同じことが起こる可能性が高いだろう。

そうなるとEVシフトで生き残るには、M&Aによる世界再編しかない。1990年代後半から2000年代前半にかけて、ルノーと日産、米フォード・モーターとマツダ<7261>、独ダイムラーと三菱自動車<7211>はじめ、世界中で業界再編が起こっている。自動車業界は世界再編の波に何度もさらされてきた。日産とホンダの提携が将来の合併に結びつくかどうかで、EVシフト後の生き残りを大きく左右することになりそうだ。

文:M&A Online

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