2017年11月、MTGOXの一部債権者が東京地裁に民事再生法の適用を申し立てた。
申立代理人の西村あさひ法律事務所の菅野百合弁護士は、「ビットコイン債権者のほとんどは、MTGOXについて民事再生手続での解決を望んでいる。実際、約200名の債権者からその旨の意見表明をもらっている。今後も、再生手続への移行と、移行後のビットコイン債権者の権利の最大化のため、できる限りの活動をしていく」と語る。
民事再生手続きは、破産開始時点の評価という上限が適用されず、ビットコイン債権者には「ビットコインでの配当も可能」(関係者)という。
東京地裁は民事再生法が申し立てられた当日、民事再生手続きを行うべきかの判断を裁判所が選任した弁護士(調査委員)に命じた。
2018年2月、調査委員は条件付きだが民事再生手続開始決定の要件を満たしているとの報告書を提出した。条件とは、「ビットコイン債権者でない一般債権者が不利にならないような民事再生手続き」などが含まれる。この条件は「対応可能」(関係者)という。
報告書に基づき東京地裁が、破産手続きから民事再生に移行するか判断する。その日は目前に迫っている。
MTGOXが保有する仮想通貨の売却に、東京地裁は慎重な姿勢をみせている。海外を含めた債権者が多く、ビットコイン相場への影響も懸念されるからだ。
破産手続きの場合、ビットコインでの配当は困難といわれる。いずれは約16万BTCが売却され、金銭に換価される可能性が高い。
一方、民事再生手続きに移行すると、ビットコインでの配当も可能になる。個人投資家も4年ぶりに手元にビットコインが戻り、再び仮想通貨での投資か換価ができる。
破産管財人は「裁判所から新たな決定がない限り、破産手続きはこれまで通りに進行する。破産管財人は破産財団の管理処分権を有する」とコメントを発表している。
乱高下を繰り返す仮想通貨を保有するMTGOXの破産手続きは、今までのルールや常識が通用しない。債権者だけでなく仮想通貨に投資しているMTGOXと無関係の個人投資家まで、固唾を飲んで東京地裁の判断を見守っている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年5月1日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)