生存企業はわずか3割。「民事再生法」適用企業のその後

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
※画像はイメージです

民事再生法は、本来は中小・零細企業、個人の活用を想定した再生手続きだった。しかし、2000年から2001年にかけて、(株)そごう、(株)マイカルなどが申請、2008年のリーマン・ショック直後にはリーマン・ブラザーズ証券(株)も申請し、大企業の活用が目立っている。

民事再生法は会社更生法に比べ適用制限が緩く、使い勝手が良いことから、2008年度は倒産全体の5.29%を占めていた。しかし、2009年に施行された中小企業金融円滑化法などの資金繰り支援策や認定支援機関の拡充に伴い、中小企業経営をサポートする制度が整えられて民事再生法による倒産は減少している。最近の倒産企業はサポート以前に、個々のビジネスモデルに課題を抱え、消滅型の破産の割合が高まっている。こうした状況を背景に、倒産全体に占める民事再生法の割合は2014年度が2.91%、2015年度も2.79%と年々低下している。

一方、民事再生法の手続はスピードアップしている。2000年度は「手続申請→再生手続開始」まで平均40.9日かかったが、2015年度は同13.2日と大幅に短縮。「開始決定→認可決定」も2000年度の平均231.1日から2015年度は同196.4日と1カ月以上も短縮した。
他の倒産手続でも、2000年12月に東京地裁から始まった破産手続の「少額管財手続制度」は、手続の少額化(申立費用20万円)、簡素化、迅速化を進め社会の要請に応えている。

今回の調査で、民事再生法を申請しても生存できる企業(生存企業率)は29.1%と3割に満たないことがわかった。申請前にスポンサー候補や事業譲渡先を決定し、申請後の清算を前提に再生手続に入る「清算型民事再生」などで消滅する企業もあるためだ。だが、大半は民事再生の手続半ばで消滅しており、70.9%の企業が再生手続の申請後に消滅している。

中小企業は二極化が拡大し、事業再生の手助けへのニーズが高まっている。だが、ビジネスモデルに行き詰まった企業には厳しい現実が待ち受けているのも事実だ。事業再生を促す手立てはあっても、経営者自ら真剣に取り組まないと決して平坦でないことを認識すべきだろう。

東京商工リサーチ「データを読む」より

NEXT STORY

【法律とM&A】株主リスト

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/9/28
2016.09.28

【M&Aインサイト】表明保証保険

森・濱田松本法律事務所
| 2016/8/28
2016.08.28

【法律とM&A】リバースモーゲージについて

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/8/11
2016.08.11

【法律とM&A】法定後見制度と任意後見制度

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/6/22
2016.06.22

【法律とM&A】土地境界について~土地評価との関係

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/6/9
2016.06.09

【法律とM&A】経営承継円滑化法の遺留分に関する民法特例とは?

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/5/16
2016.05.16

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5