公認会計士が博士号を取るということー佐藤信祐公認会計士に聞く

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編集部撮影

大学院の「学び」で、実務に最も役立ったのは…。

-通常のやり方とは違いますか?

通常はテーマを決めて査読論文を書き、ある程度たまったところで目次を作り、論文を書いていきます。査読論文を書いているうちにテーマが変わることも珍しくありません。そうなると研究は後戻りし、時間がかかります。

-最初に目次を作ることで、研究テーマがぶれないという効果があったわけですね。

それだけではありません。目次順に査読論文を提出したので、後でつなぎ合わせればそのまま博士論文になる。だから1年半で博士号を取得できたわけです。

-大学院で学んだことで、ビジネスにも良い影響はありましたか?

徹底して一次資料となる文献にあたるという研究マナーを身に着けたことが、自分にとって最もプラスになりました。たとえば会計制度にしても、国会での審議記録などの立案当時の一次資料に当たることで制度の趣旨が正しく理解できます。

意外と実務家は自分勝手な思い込みや通説で制度を解釈していることが多く、著書でも間違ったことを書いているケースが少なくない。当然、ビジネスの現場でも制度趣旨に合った助言や指摘ができるわけですから、税務や法律上でのトラブルから顧客を守ることにも役立ちます。

-2017年に博士号を取得なされ、いよいよ本業に集中ですね。

実は2017年度に財産評価基本通達が、2018年度には事業承継税制が改正されて、その関連書籍を今年5-6冊、来年5冊ほど発行する予定です。当面は著作活動が忙しいですね。実は料金を10万円に値上げしたのは2017年で売り上げは再度減少しましたが、前回の値上げ後と同じペースで回復しつつあります。

おそらく東京オリンピックが開かれる2020年には元の売り上げに戻るでしょうから、それまでは著作に力を入れていきたいですね。事業承継税制の大改革で、今後のM&A実務は大きく変わるはず。これに関する書籍を出すことで、仕事の次のステップにも生かせると思っています。

「今は事業承継税制についての著作を多く抱えている」と、佐藤さん(編集部撮影)

聞き手・文:M&A Online編集部 糸永正行編集委員

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