公認会計士が博士号を取るということー佐藤信祐公認会計士に聞く

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編集部撮影

「3年で取れなくて当たり前」の博士号を1年半で取得

-「客層」が良くなったわけですね。

顧客側の対応も変わりました。昔は「これ調べといて」という依頼も多かったのですが、1時間=10万円となると、貴重な時間で単純な調査をやらせていては割に合わない。今では顧客側がしっかり下調べをした上で依頼にいらっしゃるケースがほとんどです。私たちとしては付加価値の高い業務に集中し、顧客により高度で充実した提案や解決策を提供できますから、本当にありがたかった。

-さて、そうして進んだ大学院ですが、博士課程後期では本業の商学ではなく法学を選択されましたね。

ええ、慶應義塾大学大学院法学研究科で博士号を目指しました。最近クローズアップされていますが、M&Aで非上場株式評価をする場合、税務に加えて会社法や租税法などの法務が関わってきます。本来、法律が絡む案件は弁護士のテリトリーですが、彼らは公認会計士に比べると数字に弱い。そこで公認会計士が法務を学べば良いのではないかと考えたのです。

-研究は苦労されましたか?

一番困ったのは先行研究がほとんどなかったことですね。判例も上場企業についての案件ばかりで、中小企業の非上場株式評価についてはないに等しい状況でした。そもそも国内の中小企業は、係争が外部に明らかになるのを嫌う傾向にあり、ほとんどが和解。つまり判例が残らないのです。

-会計事務所を運営されながら修士課程を修了され、博士号を取得するのに何年かかりましたか?

1年半です。

-1年半ですか? 文系では3年の博士課程中に取得できるケースが稀(まれ)で、満期の6年をかけても提出できず中退する方が多いと言われていますが…。

博士論文が書けるかどうかは、研究テーマの選択にかかっていると思います。普通は進学してから博士論文のテーマを決めるのですが、私は進学時に論文の目次を作成していました。その目次の順序に従った内容の査読論文を、ほぼ3カ月に1本のペースで提出したのです。

「博士論文が書けるかどうかは、研究テーマの選択にかかっている」と、佐藤さん。(編集部撮影)

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