Write-off

連載-語源から学ぶ「金融・経済」の英単語 も最終回となりました。今回は、句動詞の write-off を取り上げます。

句動詞は、「(基幹)動詞+副詞」または「(基幹)動詞+(副詞)+前置詞」によって構成され、ひとつの動詞のように機能する英語の重要な形式です。「群動詞」または「動詞副詞結合」と呼ばれることもあります。

「write off」という動詞は、基幹動詞 write と補助要素である(副詞の)off で構成されています。

フランス語などラテン系の言語では、通常こうした語の形成をとらず、接頭辞の形で基幹動詞の前に接合して一語を形成します。例えば、ac-count, ex-pense, per-formance, re-cession, inter-est, dis-closure などです。

一方で、デンマーク語やスウェーデン語のような北欧語では、概ね英語に似た語形成の仕方をします。スウェーデン語の gá av は go off、dyka upp は turn up、komma fram は come out といった風に表現されます。

こうした「句動詞」は、ドイツ語とオランダ語では「分離動詞」といって、辞書に見出しとして出る不定詞はラテン系の言語の場合のように、接頭辞が基幹語の前に載って一語に綴られ、実際に活用するときは英語のように離れて句動詞のようになるのです。

例えば、write off に(語形的に)あたる語は、ドイツ語で abschreiben、オランダ語では afschrijven と辞書に載っていますが、「I write off.」を実際の文章で活用すると、それぞれ(独)「Ich schreibe ab.」(蘭)「Ik schrijf af.」となるわけです。

こうした語形成は、日本語で言えば2つの動詞を組み合わせた、「立ち去る」、「書き上げる」、「飲み干す」などの言葉に似ていると考えられます。

例えば、英語の up という副詞を例にとってみます。up はなんとなく「上昇」の意味があることはお分かりでしょう。look up、pull up はそれぞれ「見上げる」「引っ張り上げる」とその気持ちがよく出た表現です。

しかし write up、make up は「書き上げる」「作り上げる」ですから、「完成」のイメージを出すことがわかります。

このように、英語の句動詞や日本語の「合成動詞」は、補助要素が具体的な雰囲気を残している場合と、抽象的に融合して「別の(意味の)語」になりかかっている語があることが観察されます。

例えば「書き留める」と「書留」では、意味が違いますよね。

さて、こんなことをお話したのは、会計用語や金融用語が、多くはフランス語から入ってきたため、ゲルマン系の語についてあまりお話しする機会がなかったからです。

そう多くはありませんが、今回紹介した write off のようなゲルマン由来の語彙も、経済や金融の世界で稀に出てきます。

ちょっと思い出してみると、これまでの連載で取り上げた語では、 hedgebondstockwarrant あたりです。

句動詞構造の語句としては、有名なところでは lay off(レイオフ、一時解雇)と set off(相殺)ぐらいしか思い浮かばないのですが、特に write off という語は、大変使用頻度の高い語棄なので覚えておきましょう。

この句動詞 write off を手元の『プログレッシブ英和辞典』で調べて書き出してみます。 動詞の項には、次のようにあります。

1) 無造作に(すらすら)書き上げる
2) 手紙を発送する、急いで手紙を書く
3)(負債などを)帳消しにする、ご破算にする、減価償却額として記載する
4) 除名する
5) 無視する、相手にしない、破棄する

語源的に対応するドイツ語の abschreiben を三修社の『新現代独和辞典』で引いてみます。

1) 書き写す、書き取る、複写する、清書する、盗み書きする、丸写しする
2) 差し引く、帳消しにする、貸方に記帳する、減価償却する
3) 取り消す、(手紙や文書などで)断わる
4)【俗語】ない(なくなった、帰らない)ものとあきらめる
5)(ペンを)使い古す
・・・自動詞の項略・・・

類似性と微妙な相違が観察されますね。いずれにしても、英語の off とドイツ語の ab は「分離」のニュアンスをもつ要素ですから、なんとなく上に示した「意味の範囲」は領けます。

名詞は write-off とハイフン(ー)を入れます。『プログレッシブ英和辞典』では、

1) 帳消し;減価償却
2) 回収不能の勘定、貸倒れ償却
3)【口語】修理のきかないもの(ポンコツ車·大破した飛行機など)

と説明があります。

文:猪浦道夫・天宮徹也(共同執筆)/編集:M&A online編集部

実践金融英語講座のメルマガ(まぐまぐ)はこちら