普段何気なく使っている金融英語のルーツを解き明かすシリーズがM&A Onlineで始まります。単語の素性を明らかにしつつ、言葉の派生の妙味を味わっていただきたいと思います。
第1回は、もちろん「M&A」(エムアンドエー)を取り上げます。
M&Aは言うまでもなく merger and acquisition (企業の合併、買収) の略です。
まず mergerは「企業の合併、統合」をいいますが、もとは動詞 merge (合併する、同化させる)から出た名詞で、この merge はラテン語の動詞 mergere (浸す)に遡ります。この動詞は例によって接頭辞がついた派生語を生み出しています。
「中へ」の意味の接頭辞in·がついた動詞は immerge (飛び込む、沈む)ですが、この系統では別の語幹から作られた immerse (浸す、沈める)の方が有名です。この名詞形は immersion (浸すこと)です。
この反対が「外へ」の意味のex·がついてできた emerge です。こちらは「水中から出てくる」というのですから「浮かぴあがる」「明らかになる」という意味です。この名詞形が emergency exit(非常出口)で有名な emergency (緊急事態)です。
この他、「下へ」を意味するsub·がついてできた submerge (水中に沈める、覆い隠す)です。あまり覚えたくはありませんが、I'm submerged in debt.というと、いわゆる「借金で首がまわらない」という意味です。