「プライムレート」の語源は?|金融・経済の英単語

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画像は「サクラソウ」 Photo by 七彩

今回は、「銀行が信用のおける企業に融資する際の最低金利」と定義される「プライムレート(Prime rate)」のお話です。

まず prime(プライム)ですが、原義は「最初の」という意味です。ラテン語では primus という形で「礼拝の第1回目の時間」を指したそうですが、後に「最初の」という意味になりました。

このラテン語の形容詞形を、イタリア語では primo(プリモ)といいます。イタリア料理のファーストディッシュ、つまりパスタ、スープ類のことを「primo piatto(プリモ・ピアット)」(piattoは「料理(本来はお皿)」です)といいます。primo の女性形は、prima(プリマ)です。「prima donna(プリマドンナ)」は、オペラの主役を張る女性歌手を指しますが、英語の「First lady(ファーストレディ)」ですから、大統領夫人も「プリマドンナ」ですね。

ドイツ語の会話では、「最高!」というときに「Prima!」と言います。「プリマハム」とは「最高のハム」ということなんでしょうね。なおスペイン語では、primero(プリメーロ)、女性形の primera は「プリメーラ」と読みますが、スペイン人はあまり母音を延ばさないので、私には「プリメラ」に聞こえます。昔、国産車にありましたよね。フランス語は、premier(プルミエ)です。

肝心の英語ですが、直系の派生語は、primary(第一位の、主要な)で、副詞形の primarily(第一に)も文書でよく見る語です。また、primer も「入門書」の意味で本のタイトルなどで見かけます。大昔は「祈祷書」の意味でした。

さて、イギリス人が好む花で primrose(サクラソウ)という花がありますが、これは中世時代の prima(最初の)rosa(バラ)が一語になりました。ほかにも派生語に primitive(原始の)があります。

ラテン語 primus から派生した別の形容詞で「principal(主要な、また重要な)」という語があります。名詞としても使われ、金融用語では「元金、基本財産」を意味します。副詞は principally です。綴りがよく似た principality という名詞は「主権」の意味です。「原理、主義」を意味する principle も大変よくお目にかかる言葉です。

実は「prince(プリンス)」もラテン語の primuscapere(取る)という動詞がついてできた語です。「最初の地位をとること」から「首領」となり「王子」となりました。princely という形容詞は、「王侯にふさわしい→豪勢な」という意味です。米国ニュージャージー州の「Princeton university(プリンストン大学)」は、かつて王子様が学んでいた町なのでしょうか。ちなみに ton は town がなまった語形で「町」のことです。

ラテン語の比較級形 prior も「前の、先の」の意味で正式に英語になっています。この名詞形が priority(優先事項)です。よく質問を受けるのですが、初演を意味するプレミア(premiere)の語源は別で、これはラテン語の praemium(褒美、報酬)が語源のようです。

長くなりましたが、次に rate(レート)です。この単語はラテン語 reor(計算する)の過去分詞 ratus にさかのぼります。同じグループに「為替レート」の rate(割合、相場)、ratio(比率、割合)、ration(定量、割合)、rating(格付け)、rational(合理的な)などがあり、すべて同じファミリーです。派生語の rationalize(合理化する)、ratify(批准する)、ratification(批准)という語も時事用語として覚えておきましょう。

さて 「prime rate(プライムレート)」の rate は、銀行の「利率」のことを言っているので、いわば「為替レート」exchange rateと同じ意味です。 rate は動詞としても重要で「格付けする」という意味があります。日本の金融機関がアメリカの格付け会社(rating agency)の評価に一喜一憂していますが、前述のとおり格付けのことを「rating (レーティング)」と言います。

ところで、ratio という語は、比較的近代にラテン語からいわば「再輸入」された言葉なのですが、実ははるか昔の中世の時代にフランス語を経由して英語に輸入されていました。その発音が変化したのが reason(理由、道理)です。言われてみれば形も意味も類似していませんか。形容詞の reasonable(リーズナブル;理にかなった、合理的な)は、外来語として日本語化しています。

文:猪浦道夫・天宮徹也(共同執筆)/編集:M&A Online編集部

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