Stock

stock はイギリス英語では「国債」、米語では「株式」を意味する言葉ですが、古い英語に起源をもち、さらに古く印欧語にその起源をさかのぼる、とても古い語のようです。そのルーツは何でしょう。

stock は昔、木の「茎」や「株」などの意味があったようで、それが「押す」「打つ」といった意味に派生させました。ですから「株」は本来の意味を受け継いでいると言えます。

ドイツ語の stock は「杖(つえ)」の意味で、スキーの「ストック」はここから来たものかもしれません(もっとも stock という英語は当時の辞書に載っていますので、英語が起源かもしれません)。これらに関連した類似の語彙としては、stub (切り株)、stucco (スタッコ、化粧漆喰) 、stump(もと切り株)なども stock に関連があるようです。stick(スティック、棒、杖)は、ゲルマン語特有の「母音交替」による類義語です。

さて、同じ stick という単語なのに、ご老人が使う杖は、どうして「スティック」と言わず「ステッキ」と言うのでしょう?

これとよく似た現象があります。例えば strike ですが、労働組合では「ストライキ」、野球では「ストライク」といいます。また、ink は「インク」と言う方が多いと思いますが、昔は「インキ」と言ったりしました。

種明かしをすると、昔入ってきた「外来語」の方が、実際の発音に近いからなのです。それに対して、戦後使われるようになった単語は、英語の綴りに引っ張られて、カタカナ表記をしたのだと考えられます。

さて、stock には「家畜」という意味もありますが、これは「木の枝などで作った柵」のイメージから出たのでしょう。他にも「在庫」の意味や、料理では「ブイヨン」の意味でも用いられます。

stock とともに「株」という意味する share (割り前、切る、刈る)も、古い英語に起源をもつ関連語です。

さて、stock にあたる古いフランス語は、stache といい「杭(くい)」を意味しました。これに接頭辞の ad- がついてできたのが attach (くっつける)で、その語幹の部分は古いケルト語 tag(木くぎ)から来ているようです。

イタリア語の attaccare から派生した語は attack です。従って attach と attack はしばらく離れ離れになっていた兄弟のような語なのです。ad- と反意の接頭辞 de- がついでできた単語が detach (分離する、取り外す)で、この単語の祖先となるフランス語の動詞の過去分詞 détachée はバイオリン奏法で「デタッシェ」と呼びます。イタリア語に直すと、「staccato(スタッカート)」です。外来語にもなっている attaché case(アタッシュ・ケース)の attaché は「随行員」の意味です。

文:猪浦道夫・天宮徹也(共同執筆)/編集:M&A online編集部