「デフレ・スパイラル」は、英語で言うと deflationary spiral です。まず先に、スパイラル(spiral)の語源について調べてみましょう。

spiralとは、spire(渦巻き、螺旋)より派生した語ですが、この用語自体がすでに「悪循環」「連鎖的変動」を意味する経済用語です。spiralは、ギリシャ語の speyra という「螺旋状のもの」を意味する語に起源を発し、若干の建築用語、医学用語の中に派生語を残しています。

さて、「デフレーション(deflation)」は「通貨縮小」を意味する語ですが、これは de- (離れて)  flare (吹く) というラテン語の合成動詞の過去分詞から出た動詞 deflate の名詞形で、原義は「空気を吹き去って抜く」です。

この反対語が 「インフレーション(inflation)」です。原義の「空気を吹き込む」から「通貨膨張」の意味に転じました。反復の接頭辞 re-がついた reflate という動詞があり、こちらは「通貨が再膨張する」ということになります。名詞は reflation (通貨再膨張)です。専門家は「リフレ」と言いますね。

この flare というラテン語の派生語は限られた医学用語に残るのみで、flatus (腸内ガス) 、flatulent (鼓腹性の)のような難しい語のほか、amatus (霊感)という不気味な単語もあります。

flare の派生語で筆者が怪しいとにらんでいるのが楽器のフルート(flute)です。手元のランダムハウス辞典で調べてみましたが、古プロバンス語までしか語源がさかのぼれず、その後不明というような記述がありましたが、古典ラテン語で flautus という語もあるので、少なくとも親戚の言葉だろうとは思っています。

西洋の人は「息を吹き込む」ということには神秘的な感じをもっていたようで、spirit (精神)、spiritual (精神的な)も元は「息をする」という語につきあたり、吹き込むと「インスピレーション(inspiration)」という語になります。

spirit をフランス語では「エスプリ」esprit といいます。person(パーソン)も非常に古い時代に per-(貫いて)son (音を入れる)という意味だったそうです。土の塊だった人間に神様が息を吹き込んで「魂」を入れて人間にしたという発想です。

動物の「アニマル(animal)」も元はイタリア語の anima(魂)の形容詞形で、言ってみれば「魂を吹き込まれたもの」という意味です。「アニメ(animation)」 も魂を吹き込まれなければ動き出さないですよね。

文:猪浦道夫・天宮徹也(共同執筆)/編集:M&A Online編集部