エコナビスタ<5585>は大阪公立大学の前身である大阪市立大学医学部発の医療サービスベンチャー。医師でもあった同大医学部疲労医学講座の梶本修身教授が、睡眠と疲労医学の研究成果を事業化するため、2009年に創業した。
同社は蓄積した睡眠データを生活習慣データと組み合わせて分析し、可視化する睡眠解析技術の開発に取り組んできた。睡眠と健康の関係は古くから知られているが、同社はこの技術を介護分野に応用する。これが高齢化社会のニーズとぴったり噛み合った。
2016年11月に商用提供をスタートした介護施設向けのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型高齢者見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr.」は、マットレスの下にSleepSensor(ベッドセンサー)を置いて、入居者のベッド上での体の動きを監視すると同時に、入眠時間や睡眠時の呼吸数、心拍数などのデータも収集する。
その他にも人感センサー、温湿度センサー、開閉センサーを備え、入居者の居室内での状態をクラウド上で一括管理して24時間見守ると同時に、介護記録システムと連携することで記録業務の省力化を実現する。こうした利便性の高さが評価され、2023年10月末時点で全国200棟以上の介護施設に導入され、2万324人の入居者が利用している。2023年10月期の解約率は0.02%と、利用施設の満足度が高いことが分かる。
2021年2月には納入した介護施設で得たノウハウや知見をベースに、東京ガスと共同開発した在宅介護者向け「ライフリズムナビ+ホーム」の提供に乗り出した。基本的な機能は「ライフリズムナビ+Dr.」と変わらないが、クラウドで一括管理したデータを元に、利用者家族やケアマネージャーなど介護関係者のパソコンやスマートフォンにデータを送信・蓄積したり、異常事態を通知したりする。
例えば「離床しました」「長時間在床を検知できません」「寝室が暑くなっています」などの状況報告や警告などをリアルタイムに通知。離れて暮らす家族らが、一人暮らしの老人をリモート見守りできるシステムだ。赤外線リモコンを使って、遠隔地からでもスマホ経由でエアコンを操作できるなど、熱中症予防にも対応する。
エコナビスタは同6月に「ライフリズムナビ+ホーム」事業をより強固なものとするための人員強化や設備投資、サービス開発などを目的に、東京ガスを引き受け先とした第三者割当増資を実施。両社の提携関係は、より緊密になった。2023年7月には東京証券取引所グロース市場への新規上場(IPO)を果たしている。
「睡眠」をベースにして、介護施設と在宅介護の「両面作戦」で高齢者を見守る同社のサービスは、介護職員の人手不足緩和と介護家族の負担軽減に役立つ。まだまだ続く日本の高齢化社会での需要拡大が見込めると同時に、欧米先進国や中国など高齢化に直面している海外市場も期待できそうだ。
文:M&A Online
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