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【M&Aサマリー3月】前年比4割増え82件、金額は小規模に
2019年3月のM&Aは82件と、前年同月(60件)を4割近く上回った。買収金額100億円超の大型案件は富士フイルムホールディングスの海外案件の1件にとどまった。1~3月期の合計は221件と前年同期比49件増加した。
上述したとおり、株式取得による子会社化では、個別財務諸表上の売上高は増加しないものの、連結財務諸表上の売上高は増加します。これに対して、対象企業を吸収合併した場合には、組織そのものが一体となるため、個別財務諸表上の売上高の増加が見込まれます。
また、合併だけでなく、事業譲渡や会社分割(吸収分割)により事業を統合した場合にも個別財務諸表上の売上高の増加につながります。ただし、合併、事業譲渡、会社分割などの統合形態であっても、従来から協力会社関係にあった当事者同士の垂直的統合であれば売上高の増加には直結しません。
これは川上企業の売上高と川下企業の仕入高が同一企業内の取引となって相殺されるためです。この場合、シナジーの主目的は売上高の増大ではなく、生産や物流における効率化やコスト削減といえるでしょう。
垂直的統合のケースは株式取得による子会社化の場合にもあてはまります。川上企業と川下企業が同じ連結グループとなった場合、両社の売上高や仕入高はいったん合算されるものの、連結財務諸表を作成する過程で連結グループ内の取引として相殺消去されます。
この場合、親会社の個別財務諸表における売上高が増加しないのはもちろんのこと、連結売上高の増加にもつながらない点は特徴的といえるでしょう。
以上のように、M&Aにおいてどのようなスキームを採用するかによって売上高に与える影響はまちまちです。また、同じスキームを採用したとしても、従来の企業間における取引関係や会計処理方法の選択によって売上高への影響額が変わってきます。M&A関連のニュースで売上高について言及されている時には、ぜひこうした要素も意識してみて下さい。
文:北川ワタル(公認会計士・税理士)
経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。
学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)
出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など
2019年3月のM&Aは82件と、前年同月(60件)を4割近く上回った。買収金額100億円超の大型案件は富士フイルムホールディングスの海外案件の1件にとどまった。1~3月期の合計は221件と前年同期比49件増加した。