2023年3月に海外留学サービス会社のリアブロード(東京都渋谷区)が発表した同4月~6月に渡航予定の1008人を対象に実施した「2023年春のワーキングホリデー渡航者実態調査」によると、2022年1月以降にワーキングホリデービザで渡航する人が急増し、2023年4月までの1年間で3倍以上も増えていることが分かった。
渡航者の内訳で最も多かったのは社会人の45.7%で、かつては主流だった大学生・専門学生の35.5%を上回った。「国内で就職する前に学生らしい経験をしたい」のが目的だったワーキングホリデーだが、今や社会人が「外国で就職するために就労経験を積む」ための制度になりつつあるようだ。
外務省の「海外在留邦人数推計推移」によると、海外在留邦人は2019(令和元)年に141万356人でピークを迎えた後に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックにより3年連続で減少し、2022(令和4)年には130万8515人となった。しかし、このうち在留国で永住権を認められて、生活の拠点を海外に移した海外永住者は55万7034人と過去最高を記録している。
地域別では長期滞在者を含む全体では米国、中国、豪州の順だが、永住者では米国、欧州、豪州と日本よりも賃金水準が高く、労働環境や社会的多様性が良好な国に集中している。日本だと賃金はじめ雇用条件が劣悪な女性永住者の比率が約62%と高いのも象徴的だ。
かつて円高時代は定年退職を迎えた高齢者が、物価の安い国に移住していた。今となっては円建ての年金や金融資産を頼りに海外で余生を過ごすのは割高でリスクが高い。永住者の多くは現地で定職を得て永住権を認められたものとみられる。
今後、東京大学や京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学といった名門大学の新卒者が海外へ渡航して外国企業へ入社する事態になれば、若手人材が一気に海外へ流れる動きが加速する可能性がある。深刻な人手不足が懸念される日本だが、人材獲得も「国際競争」となる時代が近づいている。
文:M&A Online
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