『M&A・企業組織再編のスキームと税務 第4版』|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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『M&A・企業組織再編のスキームと税務 第4版』 太田 洋 編著、大蔵財務協会刊

2016年2月の「第3版」刊行後の税制改正や重要判決に対応して、版を改めたのが本書。

具体的には、2017年度税制改正で創設されたスピンオフ税制、18年度税制改正に導入された自社株対価TOBに関する課税繰延特例について詳述。第9章と第10章を全面的に書き改めた。

2016年には、租税回避の要件について争われた「ヤフー事件」「IBM事件」がいずれも最高裁で決着した。これを受け、租税回避行為の一般的否認規定である法人税法132条について論じた個所を大幅に修正した。

M&A・企業組織再編のスキームと税務

スピンオフ税制は企業の機動的な事業再編成を促進するのが導入の目的。特定事業を切り出して独立会社として運営するスピンオフは従来、非適格組織再編として取り扱われてきたが、一定の要件を満たすものについては課税繰延・非課税措置の適用が認められるようになった。

一方、自社株対価TOBに関する課税繰延特例は、現金の代わりに自社株を使ったTOBを行いやすくのが狙い。TOBに応募した株主は株式譲渡益に課税されていたが、新たに保有した買収側企業の株式について売却する時まで課税を繰り延べる。

トピックスといえば、企業組織再編に絡む大型の税務訴訟として注目を集めてきた2大事件の最終決着。判決確定により、実務への影響などに興味が移ることになった。

その一つは、インターネット検索大手のヤフーが子会社の吸収合併に伴う税務処理に際し、国税当局から租税回避行為と認定され、追徴課税されたことを不服として国を相手取って争ったのが「ヤフー事件」。国側の全面勝訴となったが、租税回避の要件について最高裁が初の判断を下した。もう一方の「IBM事件」では国側の敗訴となった。

編著者を代表する弁護士の太田洋氏は西村あさひ法律事務所パートナー。M&Aや企業組織再編のスキームの類型ごとに、課税上の取り扱いの概要や法令解釈上問題となり得る点を深く掘り下げて分析・検討するという方針は初版から一貫している。M&Aの戦略的税務に関する必携書として定評がある。(2019年3月発売)

文:M&A Online編集部

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