数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由
荒木 博行 著、日経BP 刊
平戸藩第9代藩主で藩政改革に成功した名君の松浦清(静山)は「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」(「剣談」より)との言葉を遺(のこ)している。つまり、成功の理由は分からなくても、失敗の理由は明確だということだ。
ビジネス本には企業の成功事例を紹介したものが多いが、本書はタイトル通り「失敗=倒産」した企業をそれぞれのタイプ別に取り上げている。
第1のタイプは「過去の亡霊」型。過去の成功体験から脱却できず、社会の変化についていけなかった企業だ。大手百貨店のそごうや米最大の自動車メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)、米玩具専門店チェーンのトイザらスなどが、これに当たる。
第2のタイプは「脆弱シナリオ」型。ビジネスの「選択と集中」により高成長をするものの、それが行き過ぎたがゆえに破綻した企業だ。大手海運業の三光汽船や大手半導体メーカーのエルピーダメモリなどが該当する。
第3のタイプは「焦りからの逸脱」型。他社との競争に神経質になるあまり、無理な目標やルール違反の営業活動を現場に押し付けた結果、経営が行き詰まった企業だ。証券大手だった山一證券、かつて都銀の一角を占めた北海道拓殖銀行などが、このタイプの倒産に見舞われた。
さらには極めてゆるい経営戦略やマネジメントで会社が立ち行かなくなる「大雑把」型、現場と経営者との意思疎通ができないために企業の方向性がバラバラになる「機能不全」型など、タイプ別に企業の実例をあげて検証していく。
企業経営にとどまらず、成功のための手法はそれこそ星の数ほどある。一方、失敗しないための手法は「やってはいけないこと」をやらないに尽きる。幸いにもそれは成功のノウハウに比べれば、ほんのわずかしか存在しない。本書を読んで「やってはいけないこと」が分かれば、あなたの会社もそう簡単には倒産しないはずだ。(2019年12月発行)
文:M&A Online編集部
事業承継の一つの手段としてM&Aが活用されるケースが増えてきた。会社を他人の手に委ねるM&Aを「会社の終活」と捉え、何から手を着け、どこに相談すればよいのかといった基本的な事項をまとめたのが本書。