ところが、そこに暴騰につながる仕組みが組み込まれていた。Iron FinanceはTITANとは別に(2)の仮想通貨担保型ステーブルコイン「IRON」も発行している。このIRONは(1)の法定通貨担保型ステーブルコインのUSDコインとひもづけられている。USDコインは1USDC=1ドルで固定されている。
1IRONを入手するには、0.75USDCと0.25TITANが必要になる。ではTITANはどうやって調達するのか?それには二つの方法がある。一つはTITANを取引所で購入すること。もう一つはIRONとUSDCを預けることで利息(報酬)としてTITANを受け取ることだ。すると、次のサイクルが成り立つ。
(1)「TITANを(取引所で)入手」→「0.75USDC+0.25TITANで1IRONと交換」→「IRONとUSDCを預ける」→(2)「TITANを(利息として)入手」→「0.75USDC+0.25TITANで1IRONと交換」…
ここで重要なのはひもづけられている関係上、交換比率は常に1IRON=1USDCであることだ。つまり2回目以降のサイクルでは無償で交付されたTITANを充てることでUSDCを25%引きで購入できることになる。しかも法定通貨担保型ステーブルコインのUSDCはリアル通貨のドルと同価値だ。
IRONと無償のTITANを組み合わせてUSDCを購入し、ドルに換金すれば25%の利益が出る仕組みだ。1IRONの取引価格が1ドルを上回れば仮想通貨市場で売ればよいし、仮に暴落してもUSDCと交換すれば1ドルを入手できる。
これが安全確実な「錬金術」として、TITANの相場を押し上げた。本来1TITANは0.25ドル(約27円)の価値のはずだが、「錬金術」の流布で取引価格が高騰。交換レートの250倍を超える64.19ドルまで跳ね上がったのだ。
日本政府は世界に先駆けて仮想通貨交換業を登録制とし、市場の安定化に取り組んできた。日本が仮想通貨で世界をリードする日は実現するのか。2019年は将来の日本のポジションを占う年となりそうだ。
仮想通貨交換業に新規参入の意向を持つ企業が160社超に達していることが、金融庁の調べで分かった。4月27日に金融庁が公表した資料では100社程度だったため、この5カ月ほどで1.6倍に増えたことになる。