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「社会保険の適用拡大」に関するアンケート調査

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予定する人員施策は現状維持が約4割
Q7.今後、予定する人員施策を選択してください。(複数回答)

今後予定する人員施策では、最多が「無い/分からない」の2,852社(構成比41.1%)だった。社会保険の適用拡大でコスト増が見込まれる中、まだ人員調整などの具体策はとらずに様子見の状態だ。

「正社員の増員」が2,012社(同29.0%)、「短時間労働者の増員」620社(同8.9%)と続く。社会保険の適用対象外だった短時間労働者の雇用メリットが薄れるため、生産効率を考慮して短時間労働者の正社員化、正社員の新規採用の促進などの効果が出てくる可能性もある。

社会保険制度には半数が保険料率の低減を求める
Q8.今後の更なる適用拡大に賛成ですか?
Q9.社会保険制度に関する要望を選択してください。(複数回答)

社会保険の更なる適用拡大について、最も多かったのは「分からない」で2,440社(構成比35.2%)だった。次いで、「反対」が2,299社(同33.1%)、「賛成」1,305社(同18.8%)と続く。

「反対」が「賛成」の1.76倍に達しており、企業は企業業績やコスト増に直結する制度改正に否定的な態度を示している。ただ、「反対」も全体では3分の1にとどまり、社会保険制度を考えると賛否の判断が難しい面もうかがえる。

また、社会保険制度に関する要望では、「保険料率の低減」が3,647社(同52.5%)と5割を占め、法定福利費を抑えたい意向が鮮明となった。次いで、「保険料徴収の強化」が1,335社(同19.2%)と続く。未加入事業所の保険料未納問題など、企業の公平な負担を求める声も根強い。

安倍政権の掲げる一億総活躍社会の実現に向け、政府は女性の就労を阻む一因として指摘されている税・社会保険の配偶者控除や被扶養者の制度、いわゆる「103万円の壁」や「130万円の壁」の見直しを示唆している。今回の適用範囲の拡大もその一環とみることができる。

短時間労働者は、健康保険の給付や将来の厚生年金を受給する権利を得ることができ、社会保険料も勤務先と折半のメリットがある。また、130万円の壁を意識せず就労できる。だが、デメリットとして給与の手取り金額が減るケースや、配偶者の扶養範囲に収まるために勤務調整や退職を選択するケースも懸念される。さらに、企業側では人材確保がこれまで以上に難しくなる局面も予想される。

企業にとって最大の懸念は法定福利費の増加であり、業績に直接影響を及ぼすことが想定される。しかし、短時間労働者を含め従業員の削減は容易でなく、法定福利費の増加には経費節減や価格転嫁で臨む姿勢もうかがえる。ただ、こうした対策が功を奏しなかった場合、業績悪化を避けられない企業も現れることも予想され、動向の注視が必要だ。

今回の適用拡大は従業員501人以上の企業に限定されており、500人以下の企業は直接の影響は少ないとみている。しかし、3年後の2019年までに更なる適用拡大が実施される可能性があり、従業員500人以下の中小企業も対象となることが想定される。より一層の適用拡大となると収益力の弱い中小企業への影響は必至だ。そのためにも業績回復が遅れた企業は金融支援に依存することなく、収益性や生産効率を高める経営を求められている。

東京商工リサーチ「データを読む」より

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