「創業家の内紛シリーズ」の第2回目は、「事業承継が絡む争い編」として、大戸屋、セコム、セブンアンドアイの3社を取り上げたい。創業者の遺骨を社長室に持ち込み社長退任を迫る未亡人など感情的なもつれも垣間見えるのが今回の事例の特徴といえる。

■創業者の若すぎる死がもたらした大戸屋騒動

大戸屋ホールディングス<2705>は海外にも積極的に店舗展開する定食やチェーンであるが、小細胞肺がんを患っていた創業者の三森久実氏が2015年7月に57歳の若さで他界したことをきっかけに、創業家と経営陣の内紛に発展していった経緯を持つ。

2015年6月の株主総会では、当時会長であった三森久実氏の意向もあり、長男の智仁氏を当時26歳という若さで常務取締役に抜擢したところだった。しかし、会長が亡くなったことにより、創業家側と経営陣側の対立が目立つようになる。

社長の窪田健一氏自体も故久実氏のいとこであるものの、智仁氏の常務取締役就任をよく思っていなかったのか、智仁氏は、前職の引継ぎも不十分なまま、香港赴任を命じられる。その後、2015年11月、創業家に近しい関係にあった専務取締役、常務取締役の智仁氏が平取締役へと降格させられ、翌年2016年2月には、ついに智仁氏が一身上の都合を理由に取締役を辞任するに至る。

2016年6月の株主総会に向けて会社から提案された人事案では、現経営陣に近しい元会長や元副社長などが取締役として、また、医師である久実氏の兄が社外取締役として就任するというものであったが、大株主である創業家側はこれに反対の意向を示した。ただ、上場会社である同社の株主総会では会社提案が賛成多数で承認される結果となった。

こうした騒動は社会的関心も集めたため、同社では確執に至った経緯を調査する第三者委員会を立ち上げている。第三者委員会の報告に先立つ単独弁護士による調査報告書[*1]によると、2015年9月初旬、三枝子夫人が突然に大戸屋を訪れ、社長室の机に久実氏の遺骨を置き、窪田氏に対し「主人があなたを見ている。窪田、社長を辞めなさい。そして智仁を社長にしなさい」と迫ったとされる報道などについても詳細な記述がある。

なお、第三者委員会の報告結果としては、創業家側と経営陣側の双方の対応に問題はあったと結論づけている。

■憶測が飛び交う経営トップの解任劇

2016年5月、警備サービス大手のセコム<9735>の取締役会は、前田修司前会長と伊藤博前社長を突如として解任した。翌月の定時株主総会では、常務取締役から社長に昇格した中山泰男氏が自由闊達な風土を取り戻す必要があった旨を説明。新たな取締役選任議案などは無事承認され、新体制が始まった。

両名が解任されたのは、セコムの業績が右肩上がりの只中であっただけに、何らかの内紛によるものではないかと物議を醸した。

セコムの連結財務データ(単位:百万円)

第52期第53期第54期第55期第56期
  2013年3月期 2014年3月期 2015年3月期 2016年3月期 2017年3月期
売上高 765,635 822,228 840,722 881,028 928,098
営業利益 108,370 120,018 123,615 128,582 131,050
経常利益 113,618 126,677 136,688 134,826 147,033
セコムの売上高推移(過去5年)
セコム公式HP 「主な経営指標等の推移(連結)」より

前田前会長の解任は、「同氏が社長職に5年、会長職に2年就いており、お上に対して自由に発言する風土が失われていた」ということだが、新たに取締役に選任された尾関一郎氏(セコム損害保険会長)が創業者である飯田亮氏の娘婿にあたることから、創業者側の意向が強く働いたのではないかとの憶測も生んでいる。

創業者の飯田氏は取締役最高顧問の職にあり、前田前会長と伊藤前社長の解任に賛成したとされる。「自由闊達な風土」云々というのは表向きの理由と取られても致し方ないといえるだろう。

■カリスマ経営者の引責辞任で創業家が復権

2016年4月7日、セブン&アイ・ホールディングス<3382>のCEOであった鈴木敏文会長が退任の会見を行った。セブン・イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を退任させるという人事案が取締役会で否決されたため、その混乱の責任を取っての引退ということであった。

鈴木元会長が会見で「獅子身中の虫」という表現を使ったように、物言う株主として知られる米投資ファンドのサード・ポイントに人事案の内容が漏れていたり、真偽のほどはわからないが、鈴木敏文氏の次男康弘氏が社長の座に就くために井阪氏を社長から退任させるという噂が流れたという。

ただ、5期連続の増収増益を達成している中で、井阪社長を退任させるのであれば、取締役会に先立つ指名報酬委員会でも委員を納得させられるだけの根拠を示すのは筋といえる。

セブンアンドアイの株式を8%程度まで買い進めていたサード・ポイント、10%近い株式を保有する創業者の伊藤雅俊名誉会長を始めとする伊藤家、一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏を始めとする社外取締役および指名報酬委員の賛同を得られなかった結果の引責辞任という意味では適切な身の引き方だったのかもしれない。

文:M&A Online編集部