ニュースやワイドショー、新聞、雑誌などでひとたび話題になると人々の関心を引き、 株価にも影響を及ぼすこともある、企業のお家騒動。その騒乱の行方はどうなったので あろうか。これまでに起きた注目の企業のお家騒動をまとめてみた。今回は、2015年に創業者が亡くなった大戸屋ホールディングス<2705>を取り上げる。

創業者の死去により、お家騒動が勃発

大戸屋HDは1958年、東京・池袋に「大戸屋食堂」として創業。1983年に法人化し、1990年代の急成長を経て2001年東証JASDAQに上場。2011年には持ち株会社化。国内全域に店舗を構えるほか、積極的に海外展開も行う有数の和定食チェーンとして知られている。  

事の発端は2015年7月、実質的な創業者として会長職の座に就いていた三森久実氏が、57歳の若さで急逝したことだ。余命1か月という肺がん末期の宣告を受けてからも精力的に業務に取り組み、死の2か月前まで海外出張をこなしていたという。久実氏は亡くなる直前に息子である智仁氏(当時26歳)を常務取締役に任命していたが、この時点で入社3年目の智仁氏に特筆すべき実績はなかった。「やがては跡を継がせたい」という願いを込めた人事であったことが伺える。  

久実氏死去後の経営は、血縁的に従兄弟である社長の窪田健一氏に委ねられたが、2016年2月に智仁氏が常務取締役を一身上の都合により辞任。そんな中、大戸屋HDのお家騒動が浮き彫りになったのが、2016年5月。会社側が発表したこれまでの役員を大幅に刷新する人事案に、創業家が反対の意向を示したのだ。

注目の中2016年6月に行われた株式総会では、窪田社長より株主に向け、事の顛末について説明があった。「創業家と力を合わせ、大戸屋の発展に尽力していく旨の合意が一旦は取れたものの、数日後に智仁氏よりこれを破棄する旨の通達があった。今後理解を得られるよう働きかけていく」というもの。ちなみにこれに対し2割近い議決権を保有する創業家側は、総会の場で発言することなく沈黙を貫いた。焦点となった人事案は可決。会社側の意向が株主から支持される結果となった。

第三者委員会によって明らかとなった「功労金問題」と「お骨事件」

内紛が続く中、同年8月に会社側が「コンプライアンス第三者委員会」を設置。事態の収束へ向けて原因の調査・究明に乗り出した。10月には第三者委員会による調査報告書が公表。中立性を欠くとの理由から、創業家の協力が得られないまま公表に至った報告書内では、確執の原因について「双方の対応に問題があり、十分な意思疎通を欠いた」と「双方に問題がある」という形で結論づけられている。  

この報告書内で、創業家側が株式譲渡に係る相続税対策のため、功労金の支払いを会社側に求めていたことや、象徴的な事件として社内でも話題になっていたという「お骨事件」の詳細が明らかになった。久実氏の死後、遺骨を持った三枝子未亡人が智仁氏とともに社長室へ乗り込み、窪田氏に詰め寄ったという衝撃的な内容は、記憶に残っている方も多いだろう。 

お家騒動の「現在」は?

2017年6月28日、大戸屋HDの定時株主総会が開催された。当日はお家騒動の大きな争点のひとつである、功労金についても議案として挙げられ、賛成可決した。創業家との合意が取れた上での可決ではないものの、創業家には2億円の功労金が会社側から支払われる予定だ。  

会社側は功労金の支払いにより、長期化しているお家騒動の幕引きを図りたい考えだが、果たして今後の展開はどのようなものになるのだろうか。智仁氏は今回の株主総会を受け、相続税支払いのための融資金額に満たないことから株式売却も検討しているという。  

創業家の株式売却が進めば、自ずと会社経営に関する影響力も弱くなり、企業体系に大きな変革をもたらすことは必至。大戸屋HDのお家騒動は、今後も引き続き注目を集めることになりそうだ。  

まとめ:M&A Online編集部