懸念はそれだけではない。カジノ市場は全世界で縮小が続く。中国からの集客が見込める長崎には5社が応募し、8月23日に豪カジノオーストリアインターナショナルジャパン(CAIJ)を選んだ。しかし、残る2地域は事業者集めに苦労している。
和歌山ではIR事業者公募に2社が応じたが、2021年5月にマカオのサンシティ・グループが撤退し、同6月に残るカナダのクレアベスト・グループを選んだ。大阪は米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同グループのみ。
これに伴い、大阪では「2027~28年度に全面開業」としていた当初方針を「2020年代後半の部分開業」に緩和した。条件が厳しいと、事業者が撤退しかねないと警戒しているためだ。「売り手市場」のIR開発で、補助金の交付や減税、業績悪化時の無条件撤退など事業者側に有利な条件を突きつけられる可能性もありそうだ。
一方、IR事業者にとっても横浜市長選による行政の方向転換は、受注後に「はしごを外される」リスクを思い知らされた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先行きも不透明のままで、2020年代後半に向けた大型投資に二の足を踏む事業者も出てきそうだ。自治体から国へのIR開発申請は10月1日に始まる。
文:M&A Online編集部