横浜市長選で確実となったカジノ撤退で「IR消滅」リスク高まる

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「日の丸カジノ」は実現するか?(写真はイメージ)

横浜市長選で、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致撤回を掲げた候補が勝利した。当選した山中竹春氏は「早い段階で横浜市としてIR申請は行わないと宣言する」と明言し、市が進めているIR事業者の選定作業についても中止する意向を示した。これにより横浜市はIRから撤退する。

誘致自治体に「横浜ショック」

幻に終わった「横浜カジノ」(横浜IRウェブサイトより)

政府が開発を認めるIRは最大3カ所。横浜市の撤退が正式に決まると、残るは大阪府・市、和歌山県、長崎県の3地域で、申請内容に問題がなければ全ての立候補都市が選ばれることになる。しかし、問題はこの3地域が「このまま残ってくれるか」どうかだ。

日本人のカジノに対する抵抗感はいまだ根強く、横浜市長選挙で「誘致撤回」の民意が推進派の現職市長の支持を大きく上回ったことにより、残る3候補地で住民による反対運動が激化する可能性が高まった。日本経済新聞とテレビ大阪が2020年10月に大阪市内の有権者を対象に実施した電話世論調査によると、IR誘致に「反対」が52%と「賛成」の37%を大きく上回っている。

IR事業者の「リスク」も高まる

懸念はそれだけではない。カジノ市場は全世界で縮小が続く。中国からの集客が見込める長崎には5社が応募し、8月23日に豪カジノオーストリアインターナショナルジャパン(CAIJ)を選んだ。しかし、残る2地域は事業者集めに苦労している。

和歌山ではIR事業者公募に2社が応じたが、2021年5月にマカオのサンシティ・グループが撤退し、同6月に残るカナダのクレアベスト・グループを選んだ。大阪は米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同グループのみ。

これに伴い、大阪では「2027~28年度に全面開業」としていた当初方針を「2020年代後半の部分開業」に緩和した。条件が厳しいと、事業者が撤退しかねないと警戒しているためだ。「売り手市場」のIR開発で、補助金の交付や減税、業績悪化時の無条件撤退など事業者側に有利な条件を突きつけられる可能性もありそうだ。

一方、IR事業者にとっても横浜市長選による行政の方向転換は、受注後に「はしごを外される」リスクを思い知らされた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先行きも不透明のままで、2020年代後半に向けた大型投資に二の足を踏む事業者も出てきそうだ。自治体から国へのIR開発申請は10月1日に始まる。

文:M&A Online編集部