会社の終活「M&A」という究極の事業承継プラン

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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『会社の終活「M&A」という究極の事業承継プラン』
 福谷 尚久 (著)、土屋 文博 (著) 中央経済社刊

事業承継の一つの手段としてM&Aが活用されるケースが増えてきた。会社を他人の手に委ねるM&Aを「会社の終活」と捉え、何から手を着け、どこに相談すればよいのかといった基本的な事項をまとめたのが本書。 

20の具体的なケースを取り上げ、背景や経緯、問題点、問題点への対応、成功のポイントなどをまとめており、中小企業経営者だけでなく、M&Aアドバイザーや公認会計士、税理士らにも役立つように仕上げてある。 

例えば取引銀行の支店長に、後継者がいない悩みを相談するプラント機器製造業の社長の事例と、別の支店長に事業拡大のために技術力のある会社の紹介を依頼する電気工事業の社長の事例を紹介し、その後、どのように調査や交渉が進み問題をどのように解決したかを説明している。

このケースでは売り手企業に詳細な資料の提出を求めたところ、財務の責任者だった総務部長が頻繁に会社を休み、1カ月以上長期欠勤したまま退職してしまうという事態に陥った。 

仕方なく総務部長の協力が得られないまま調査を続けた結果、会計処理方法が不適切であることが判明し、売却する株式の価格を引き下げなければならなくなった。このため経営者の親族である一部の株主が、経営陣の責任を追及し「有利な取り分をよこせ」と主張する問題に発展した。 

会社の終活

最終的には、経営陣の退職金を大幅に減額し、その分の資金で株式の価格を引き上げることで決着したという。 

こうしたM&Aを巡る様々な事例が紹介されており、最初から順を追って読む必要はなく、関心のある事例から読めるように工夫されている。 

後半はQ&A形式で、事業承継に関する税務、会計、法務の実務についてポイントや対応策を取り上げた。

例えば「後継者がおらず、会社を売却することを考えています。会社を売却した場合には、税金がどのくらいかかりますか」といった質問に対し、株式譲渡による所得税の計算方法などを示している。(2019年10月発売)

文:M&A Online編集部

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