そうか、あの会社も消えたのか…2022年の「沁(し)みる倒産」3選

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負債総額の大きさとは関係なく心に沁みる倒産がある(写真はイメージ)

多角化で生き残りを賭けた名門オンキョーの挫折

オーディオの名門メーカーが力尽きた。上場企業だったオンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)が5月13日付で、大阪地方裁判所から破産手続の開始決定を受けて倒産したのだ。

終戦翌年の1946年に松下電器産業(現・パナソニックホールディングス)出身の五代武氏が「大阪電気音響社」として創業。「オンキヨー」ブランドでスピーカーをはじめとするオーディオ機器の製造・販売を手がけ、国内オーディオ業界で頭角を現す。

1957年に東京芝浦電気(現・東芝)の資本参加を受け入れ、東芝グループに入った。しかし、1990年代に入ると音楽機器のデジタル化とバブル崩壊で赤字に転落。1993年には東芝が保有全株式を売却して資本関係を解消している。

「老舗」の多くは祖業にこだわり、主力事業の衰退と共に消えていく。しかし、オンキョーは違った。オーディオ機器だけでは安定経営は難しいと考えたオンキョーは、多角化に踏み切る。

2007年7月にTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資引き受けでパソコンメーカーのソーテックを買収し、同事業に参入した。AVメーカーらしく、音響性能にこだわったパソコンを開発。買収前は韓国からの輸入が主力だったが、買収後は日本国内での組み立てへ移行して品質にこだわった。

2面ディスプレーを搭載したノートパソコン「DXシリーズ デュアルディスプレイモバイル」といったユニークな製品を自社ブランドで販売するなど話題を呼んだが、パソコンの低価格競争に飲み込まれて販売が低迷。2012年1月にオンキヨーは量販店でのパソコン販売を停止、ネット直販と法人販売に特化した。しかし、販売は持ち直さず、全機種の生産を停止している。経営多角化が裏目に出た格好だ。

DXシリーズ デュアルディスプレイモバイル
オンキョーが発売した「DXシリーズ デュアルディスプレイモバイル」(同社ホームページより)

2010年にジャスダック市場に上場したものの、オーディオ機器市場の縮小で業績が悪化して2021年3月期には2期連続で債務超過となり上場廃止に。2022年3月には子会社のオンキヨーサウンド(大阪府東大阪市)とオンキヨーマーケティング(東京都墨田区)が自己破産を申請するなど、グループの経営環境は急速に悪化していた。

主力のホームAV事業を譲渡して、その手数料収入による事業継続を模索していたが、資金繰りが行き詰まり、事業継続を断念した。オーディオファンにとっては、また一つ名門企業が消える淋しい年となった。

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