中国経済の回復が見えない。不動産バブルの崩壊や少子高齢化といった「日本化」と呼ばれる逆風にさらされている。景気の長期低迷が懸念される。日本ではM&Aによる業界再編や経営規模の拡大による事業効率化で生き残る動きが活発しているが、中国ではどうか?
アジア開発銀行総裁や財務省財務官などを歴任した中尾武彦みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長は、中国でのM&A活用について「国有企業との関係で民間企業を支援したり、国の政策が届きやすくなったりする方向に向かう可能性が大きいのではないか」との見方を示した。日本記者クラブ(東京都千代田区)の会見で、M&A Onlineの質問に答えた。
さらに「中国での株式上場では、教育やITなどの分野で規制が厳しくなっている。教育については機会平等の観点から富裕層だけにサービスを提供することを問題視し、ITは巨大化しすぎて国の力が相対的に削がれるとの懸念があるからだ」(中尾理事長)と、政府による企業の規制が引き続き厳しいと指摘している。
こうした政府による規制強化で、中国での民間企業の投資行動は慎重になっている。一方で国有企業が高水準の投資を継続して中国経済を下支えする状況が続くなど、官主導の景気刺激が続く。
1990年代に日本が直面したバブル崩壊の再来と懸念されている不動産不況対策では、未完成物件のホワイトリスト化による工事資金の融資促進や地方政府による住宅在庫の買い上げなどが実施されている。
しかし、「ホワイトリストも完全にリスクを補償してくれるわけではなく、銀行は融資に慎重な姿勢を崩していない。地方政府による買い上げも債務の拡大を恐れて広がらず、縮減した在庫は1割程度」(同)と振るわないという。相変わらず不動産バブル崩壊の火種はくすぶったままだ。
中尾理事長は中国経済の構造改革について「開放的貿易や投資体制の維持、安心して外国企業や国内の民間企業が活躍できるビジネス環境が必要だ」と提言している。希望は中国の起業熱が相変わらず旺盛なこと。「起業家精神の維持や高度技術への投資も、中国経済復活のために重要」(同)という。
文:糸永正行編集委員
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