また、より細分化した業種別でみると、ホテル・旅館などの「宿泊業」が112件で最も多かった。次いで、「飲食料品卸売業」と「食料品製造業」が各105件、「飲食店」93件、「総合工事業」92件と続く。
「宿泊業」は、経営不振企業が多かったところに、東日本大震災で、旅行や行楽の自粛で客数の落ち込みに拍車がかかり経営を支えきれなくなったケースが頻発したことが要因に挙げられる。さらに、震災による施設の被災などをきっかけに事業継続を断念するケースもみられた。
また、「飲食料品卸売業」や「食料品製造業」などでは、原発事故の「風評」被害が倒産の引き金になった事例もあった。
「飲食店」は震災直後の「自粛」ムード、「総合工事」は建築資材不足による工事遅延や中止から経営体力を弱める企業が多かった。いずれにしても業績が震災前に回復することができなかった企業の破綻が目立つ。
倒産形態別では、最も多かったのが破産の1,356件(構成比73.0%)だった。また、民事再生法が136件(同7.3%)、特別清算が36件、会社更生法が12件で、法的倒産が1,540件(同82.9%)と8割を占めた。一方、私的倒産では取引停止処分が238件(同12.8%)、内整理が79件(同4.2%)だった。
法的倒産の推移では、震災時2011年の消滅型(破産と特別清算)の構成比が86.3%(341件)だったのに対し、再建型(会社更生法と民事再生法)の構成比は13.6%(54件)だった。
消滅型の構成比は、2012年が86.8%、13年94.1%、14年93.7%、15年95.4%、16年94.7%、17年95.5%と拡大しているが、再建型は13年以降は10%台を割り込み、震災の影響を受けた企業では事業の再建が容易ではないことを浮き彫りにした。
まもなく「東日本大震災」から丸7年を迎える。政府は、復興期間を10年間と定め、前期5年間の「集中復興期間」を経て、現在は2016年度から2020年度までの5年間を「復興・創生期間」と位置付けて復興に取り組んでいる。
これまでの「住まいとまちの復興」では、宅地や災害公営住宅の完成戸数の増加や、鉄道・道路などのインフラが概ね復旧した。また、「産業・生業の再生」では、営農再開可能面積の拡大や水産加工業での施設再開などが進むほか、商店街の本格復旧支援等も行われている。さらに、観光復興の推進として2020年までに東北6県の外国人延べ宿泊者数150万人泊を目指している。
しかし、この一方で全国の避難者数は、いまだ約7万3,000人(復興庁発表、2018年2月13日現在)にのぼり、震災から丸7年を迎えようとしながらも傷あとは深く残されたままだ。
「震災」関連倒産は収束傾向をたどっているが、2017年も月平均では5.9件ペースで発生し、震災の影響から脱却できない企業が依然として多いのが現状だ。
復興の進展に伴い、地域や個人、企業からのニーズは 一層多様化している。このため、よりきめ細かな支援が今まで以上に必要になっている。
震災関連の集計基準
「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。
※集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
※「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。
倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)
巨額のリコール問題に揺れるタカタ。東京商工リサーチのアンケート調査によると、同社のグループ企業と取引する企業の約9割が、今後も取引の継続を望んでいることがわかった。
脱毛サロンの「エタラビ」が倒産した。負債総額は約49億6400万円と現時点ではエステティック業界で過去3番目の大型倒産で、一般会員約9万人が影響を受ける可能性があるという。