ゴーディは「自分には作家やパフォーマーやミュージシャンのような才能があったわけではない。でも、自分に与えられた才能にとても満足している」話す。それは、ほかの人々から最高のものを引き出す才能であり、いかなる時代においても最も重要な才能なのだ。
モータウンのビジネスモデルは、まだ磨かれていない「原石」を掘り出し、彼らを一人前のスターに育て上げること。今では当たり前だが、当時は前例のない新しい試みだった。
「伝説のレーベル」だけにモータウンについての書籍や記事は多い。ポッドキャストもある。監督のターナー兄弟は「この映画は、どんな新しい価値をもたらすことができるのか?」と自問したという。
兄弟が注目したのはモータウンの設立に参加し、長く同社の副社長を務めたブラックミュージック界の大御所でもあるスモーキー・ロビンソンとの関係だった。 この旧友二人の関係を物語の中心とすることで、本作はこれまでにない新たなモータウンの物語となっている。
今、米国は警察による黒人に対する不当な暴力に抗議する「ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter)」運動と、それに反目する白人至上主義者との対立と分断に揺れている。欧州に目を転じれば、アフリカや中東からの難民・移民と国民との摩擦が日に日に深刻になっていく。
モータウンの音楽はアフリカ系アメリカ人アーティストたちによって創作され、人種、階級、国境の垣根を飛び越え、全世界を魅了した。モータウンが象徴する希望のメッセージが、分断する社会に再び共感と融和をもたらすことを祈りたい。
映画の終わりに登場するオバマ元大統領は「われわれを結び付けるものは、われわれを分かつものよりももっと強い」と語る。状況がどれほど希望のないものであろうと、かつてモータウンが実現した平等や統合は達成できるのだということを、この映画は伝えている。
文:M&A Online編集部
『メイキング・オブ・モータウン』
監督:ベンジャミン・ターナー ゲイブ・ターナー
出演:ベリー・ゴーディ スモーキー・ロビンソン
2019年/カラー/5.1ch/アメリカ、イギリス/ビスタ/112分
原題: Hitsville: The Making of Motown
字幕翻訳:石田泰子
監修:林剛
配給:ショウゲート
© 2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved.
公式HP makingofmotown.com
2020年9月18日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
『摩天楼はバラ色に』は、単身ニューヨークでの就職を決意した主人公が強者ひしめき合うビジネス界を上りつめ、アメリカン・ドリームを手にするまでを描く痛快コメディ。