今、多くの銀行では、個人の顧客相手に資産運用や住宅ローンの提案をするリテール部門の収益に苦しんでいる。なぜなら、リテール部門は個人の顧客を相手にするため、手数料が低く、かつ個人の相手なので時間がかかる欠点があるからだ。また多くの人員を割く必要があり、多くの銀行ではこの部分が赤字になっている。
では、将来的に、銀行のリテール部門はどのようになっていくのだろうか。様々な金融関係者と接点がある私が銀行の未来について考察したのでぜひ読んで欲しい。
個人部門の大きな柱は、個人顧客を相手に行う資産運用業務だ。実際にこの業務に憧れて銀行に就職する人は多い。
しかし、決して利益を出しやすい分野ではない。なぜなら、日本人の金融リテラシーはあまりにも低いため、投資信託や保険に気持ちを向かわせるのに莫大な時間がかかるからだ。
さらに、2015年ごろから週刊誌に銀行の手数料の高さを叩かれ、金融庁から金融業界は注意を受けている。その結果、保険や投資信託の手数料は大幅に下落した。
ただでさえ、収益率の悪いリテール部門だが、手数料の低下によってさらに窮地に立たされている。そこで、多くの銀行では、リモートでの資産運用業務に力を入れるようになった。
対面だとどうしても会うまでに移動の時間がかかるため、効率が悪いからだ。リモートに注力することにより収益は改善されたが、今後は親密な証券会社にすべての資産運用を任せる可能性が高いと私は考える。
例えば、三井住友銀行の場合は、三井住友カードでSBI証券で投資信託の積み立てを行うと、最大5%のポイント還元をもらえる施策を行っている。
ずっと5%還元を続けるのは正直無理だと私は思っているが、これによって多くの顧客を三井住友カードとSBI証券に紹介できるだろう。
そして一定の顧客が増えた段階で、銀行は資産運用業務から手を引く可能性がある。
SBI証券ではネットリテラシーの高い人が取引を行い、そしてグループ傘下の証券会社であるSMBC日興証券が大口先の取引を行うのだ。
この仕組みを作れれば、銀行がわざわざ資産運用業務を行う必要はない。まだどこも公表はしていないが、今後このような可能性になるのが高いと私は考える。