回転ずし「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIES( F&LC)<3563>は、ウニ養殖を行う事業会社を世界の各地で運営するアイルランドのVerdant Bloom Limitedと資本業務提携した。
F&LCは、Verdant Bloomの日本法人であるウニノミクス(東京都江東区)と連携して、良質な国産養殖ウニを開発し、スシロー店舗での販売に向けた体制を構築するとともに、国内天然ウニ漁獲量の減少や、増え過ぎたウニにより藻場が荒れる磯焼け問題の解決にも取り組む。
F&LCの取り組みで、おいしいウニが手ごろな価格で食べられるようになるだろうか。また今回の資本業務提携はM&Aに発展する可能性はあるだろうか。詳細を見てみると。
Verdant Bloomは、磯焼けなどで痩せたウニを買い取り、独自の陸上養殖技術と専用飼料を用いて、2カ月ほどで良質なウニに育て出荷している。
ウニノミクスは、大分県国東市と山口県長門市で商業生産を行っており、今後他の場所で事業を展開する計画もある。F&LCはVerdant Bloomに資本参加し、ウニノミクスとともに痩せたウニを良質な状態に回復させスシロ―店舗での販売を目指す。
ウニノミクスのPerry Bevin CEO(最高経営責任者)は「F&LC との協業により、生産量を拡大し、より多くの消費者に高品質なウニを届けることが可能になる」とし、事業の急成長を予想する。
F&LCは2022年に魚の養殖事業を手がける拓洋(熊本市)と共同で、魚の養殖や販売を行うマリンバース(熊本市)を設立したほか、同年には、ゲノム編集(遺伝子を切断し、もともと備わっている性質を変える技術)を活用した水産物の品種改良を進めるリージョナルフィッシュ(京都市)に出資している。
回転ずし業界では、大手のくら寿司<2695>も魚の養殖事業を展開しており、F&LCの取り組み強化によって、回転ずし業界ですしネタの養殖化が一段と進むことになりそうだ。
F&LCは今回の資本提携の内容に関して、出資比率、経営への関与などの詳細は明らかにしていないが、経営権を握らないマイナー出資で、事業シナジーを求める提携であると見られる。
F&LCが2010年以降に適時開示したM&Aは2021年に吉野家ホールディングス<9861>から、持ち帰りずしの京樽を買収した案件だけで、件数は少ない。中期経営計画でも、出店については積極的なもののM&Aについての言及はない。
こうした状況を見ると、今回の資本参加は養殖ウニ商品の共同開発に留まり、M&Aに発展する可能性は低いと言ってよさそうだ。
F&LCの水留浩一社長CEOは「天然漁獲に依存していたウニを、養殖で計画的に生産できることが可能になるほか、通常の食材使用が難しい磯焼けウニを原料とすることで、資源の有効活用や海藻回復への好影響も期待できる」としている。
おいしいウニを手ごろな価格で食べられる日が訪れる可能性に関しては、M&Aとは異なりこちらは高いと言ってよさそうだ。
関連記事はこちら
・くら寿司の「養殖魚」事業を支えるウミトロンとは
・「くら寿司」に続き「スシロー」も漁業に参入 ゲノム編集で魚の品種を改良
文:M&A Online記者 松本亮一
学研ホールディングスは、傘下の学研エデュケーショナル(東京都品川区)を介して、講談社(東京都文京区)傘下の講談社パル(同)が運営する「講談社こども教室」事業を譲り受ける。